こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

BAD LANDS バッド・ランズ

詐欺師も半グレも刑事もチンピラも博徒も、会話の端々にちょっとしたボケとツッコミを入れ、軽快なテンポをさらに加速させる。大阪独特のノリが切羽詰まった登場人物たちの言動にほのかなユーモアを持たせ、スクリーンに張り詰めた空気を一気に緩めてくれる。物語は、オレオレ詐欺の受け子をまとめる女が不肖の弟を救おうと奮闘する姿を描く。貧困層が肩を寄せ合って暮らす街、胆力行動力面倒見の良さで彼女は仲間から一定の信頼を勝ち取っている。だが、刑務所帰りの弟は短慮、博奕と強盗に失敗し、死体と借金を抱えた姉弟は必死でもみ消し工作をするが、警察と組織双方に追われる身となってしまう。カネだけが信じられる裏社会、悪党になり切れず、ギリギリの人情とわずかな良心を残したままフルスロットルで駆け抜けるヒロインはあくまでクールだ。

高城の下で生活保護受給者を使った詐欺を繰り返すネリは出所してきた弟・丈を引き受け闇賭博に付き添う。丈はそこで借金を作った挙句、請け負っていた暗殺も失敗し、高城のカネを強奪しようとする。

丈は高城に返り討ちに会うが、すんでのところネリに救われる。高城の死体を埋めた後、現金をかき集め金融資産を現金化して逃亡の準備をするが、ヤクザにバレそうになる。一方で、高城を追う刑事たちもネリのアジトに接近、ネリは頭をフル回転させて難局を乗り切ろうとする。このあたり、犯罪者として生き残るには人を動かす論理的な思考が必須と訴える。ほとんどの人間はカネで転ぶ。だが、自分が生きた証を残そうと命を捨てる者も少数はいる。ケチな詐欺師にもプライドは残っていると、ネリのために死んでいった男たちの背中は訴える。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

賭場を仕切り、追い詰められたネリに交渉を持ち掛ける金髪目張り男装の金庫番女が圧倒的な存在感を示していた。昨今、金融機関等での身元確認や違法送金はより厳重にチェックされるようになっているが、他人名義の証券証書をあれほど簡単に扱えるものなのか? その手口をもう少し見せてほしかった。

監督     原田眞人
出演     安藤サクラ/山田涼介/生瀬勝久/吉原光夫/ サリngROCK/天童よしみ/江口のりこ/宇崎竜童
ナンバー     179
オススメ度     ★★★*


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