こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ハント

国家の中枢にスパイがいる。見つけなければ疑いをかけられる。怪しいやつがいる。だが相手も自分をスパイにでっち上げようとしている。お前は誰だ? 自分は何者だ? 容貌がよく似た2人は、いつしか鏡像を見ているような錯覚に陥っていく。物語は1980年代韓国、情報機関内の独立した部署の責任者同士が熾烈な生き残り競争を繰り広げる姿を描く。軍事政権下、大統領は独裁色を強め民主主義は弾圧されている。同時に、北の脅威はすぐそこに差し迫っている。そんな中、内部に深く浸透した敵はトップシークレットを盗んでいく。先に仕掛けなければやられてしまう。そんな焦りの中、確たる証拠もなく権限を過剰に行使する男たち。祖国や大義に殉ずる覚悟を決めた彼らの命がけのゲームは、瞬きを忘れるほどスリリングだった。

国家安全企画部の海外次長のパクと国内次長のキムは、組織内のスパイをあぶりだせと命令を受ける。お互い相手こそスパイと確信した2人は、部下を使ってお互いの部署を監視し合う。

政権による拷問で多くの学生がアカの烙印を押されて命を落としていることをキムは憂いている。面倒を見ている女子大生の身元保証人になって何度も警察に出向いたりもしている。北の亡命者確保に失敗したパクは、内通者のあぶりだしにさらなる力を投入する。そこに浮かび上がってきた大統領暗殺計画。外遊中の暗殺は国内問題でも海外問題でもある。大統領警護という同じ任務に就きながら、相手の真意を少しずつ理解し始める2人。ギリギリまで追い詰められた男たちの心理的な駆け引きと葛藤、思わず息をのむ緊張感を孕んだ映像はクライマックスまで疾走を続ける。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

そして明らかになるスパイと裏切り者の真実。本来立場が正反対の憎むべき敵なのに目的は同じだという皮肉。正体は明かせなかったけれど、お互いに自分たちは同類であったと認め合う2人。諜報の世界に身を捧げ、偽りの人生を送らなければならない男たちは、死をもってしか苦悩から解放されない。その哀しみがリアルに再現されていた。

監督     イ・ジョンジェ
出演     イ・ジョンジェ/チョン・ウソン/チョン・ヘジン/ホ・ソンテ/コ・ユンジョン
ナンバー     180
オススメ度     ★★★★


↓公式サイト↓
https://klockworx.com/huntmoviejp