音もなく忍び寄り喉を掻く。ナイフを奪い急所に突き立てる。銃を手にした者には躊躇なく発砲する。彼に狙われたものは絶対に逃れられない。物語は、ひとり娘を誘拐された殺し屋が、彼を仇と狙う刺客と闘いながら娘を奪還しようとする姿を描く。遠い異国の地で協力者は少ない。凄腕の刺客は殺し屋に匹敵する技量を持ちながらも人を生きたまま切り裂くなど、心は狂気で満たされている。素手、ナイフ、鉈などを使った肉体の軋みが伝わるような格闘・接近戦から、走り跳びクルマを爆走させる躍動感あふれるチェイス、さらに拳銃小銃手りゅう弾まで使った派手な殺戮・破壊が、波状攻撃のように押し寄せてくる映像は、瞬きする間もないほどのスピード感。ひたすらバイオレンスにこだわったアクションはむしろすがすがしいカタルシスを覚える。
ヤクザの親分を暗殺したインナムは、元恋人が死体で見つかったうえ娘が誘拐されたと知らされる。娘の行方を追ってさっそくタイに飛ぶが、娘は臓器売買組織に売り飛ばされていた。
インナムに兄を殺されたレイは復讐を誓い、インナムの足跡を追う。その際、インナムの協力者を捕えては拷問するのだが、逆さ吊りにして解体していく。その残忍さは常軌を逸していて、目的のためには一切の情動を消し去ることができる冷血漢を演じたイ・ジョンジェが不気味な魅力を発散させていた。ただ殺すために生きている、そんな死神のごときキャラが圧倒的な存在感を放っていた。
◆ネタばれ注意！ 以下 結末に触れています◆
娘の監禁場所を突き止めたインナムは組織の支配する町に乗り込む。一方のレイも地元ギャングから重火器を奪いインナムを襲撃する。さらに武装した地元ギャング、警察の特殊部隊などが入り乱れ、自分以外はみな敵という状況でインナムは娘を救出しなければならない。命を惜しんでは生き残れない。守るべきものがある男と失うものがない男。究極の戦場を自ら演出する男たちの暴力と死の美学は、今や肉体的な頑強さだけが男の特権であると、ジェンダー平等社会に訴えているようだった。
監督 ホン・ウォンチャン
出演 ファン・ジョンミン/イ・ジョンジェ/パク・ジョンミン/オ・デファン/チェ・ヒソ/白竜/豊原功補
ナンバー 2
オススメ度 ★★★
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