こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

バーナデット ママは行方不明

創造こそ我が人生。結婚出産そして子育て、よき夫と聡明な娘に恵まれ世間的に見れば幸福なはずの女は、その思いをずっと抑制して生きてきた。それゆえに社会の不適合者に成り下がり、本人もそれを自覚している。物語は、長期休養中の建築家が新たな希望を見出す過程を描く。隣人やママ友とは全く価値観が合わず理解しようともしない。夫や娘の順調な成功や成長を見ていると、自分が置き去りにされた気分になる。せっかく新天地を求めて引っ越したのに、不満ばかりが募っていく。そんな状況で彼女は精神のバランスを崩し薬を手放せなくなっている。もはや今の環境を180度変えるしか生き返る術はない。そう思ったときにひらめいた極地への旅行。自分のやるべきことと自分が求められることを見つければ人間は前向きになれるとこの作品は訴える。

かつて天才建築家と評されたバーナデットは20年に及ぶ主婦業にウンザリしている。有名私学に合格した娘・ビーが褒美に南極旅行をねだったのを機に、彼女の運命が回り始める。

夫・エルジーやビーとは話が合わせられるが、ママ友でもある隣人とはトラブルばかり。信頼していたAI秘書も犯罪がらみと、彼女にとって不愉快なことばかりが起こる。ビーの手前行くと言った南極旅行も、行かずに済む言い訳ばかり考えている。旧知の黒人に愚痴をこぼすシーンでは、周囲の迷惑を顧みず声高に地元の悪口を言い募り、バーナデットの心の病がもはや取り返しのつかないところまで来ていると示唆する。知的水準は高いが「危ない女」にしか見えないバーナテッドを、ケイト・ブランシェットが繊細かつ大胆な演技でリアルに再現していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

エルジー精神科医に理詰めに問い詰められたバーナデットは逃亡を図る。誰にも告げずに向かった先は、あれほど嫌がっていた南極。そこでの出会いが彼女を再生させる。強引に己の思いを通す彼女の行動力は、夢をかなえるには鋼鉄の意志が必要だと教えてくれる。でもこんな女はやっぱり迷惑、ユーモアがあれば楽しめたのだが。

監督     リチャード・リンクレイター
出演     ケイト・ブランシェット/ビリー・クラダップ/エマ・ネルソン/クリステン・ウィグ/ゾーイ・チャオ/ジュディ・グリア/ローレンス・フィッシュバーン/ジェームズ・アーバニアク
ナンバー     181
オススメ度     ★★*


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