こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

スラムドッグス

追い払われ邪険にされてろくな餌も与えられず罵られ悪態をつかれ散歩にも連れて行ってもらえない。なのにそれが飼い主の愛情表現だと信じている。物語は、クズ男に飼われていた犬が自我に目覚め虐待されたことに報復する過程を描く。何度捨てられても記憶を頼りに飼い主のもとに帰る。だが、クルマで3時間以上かかるような遠い街に置き去りにされ、今度こそ途方に暮れる。野良犬になった事実を認めなくなくて、 “これはボール拾いゲームの続きだ” と自らに言い聞かせる場面が哀切を誘う。やがて彼は同じ境遇の犬たちを仲間にして復讐の長い旅に出る。その間の、食べて寝て排泄して交尾するという本能の赴くままに生きる犬たちの瞳は自由の輝きに満ちていた。犬と人間のパートナーシップを描いた映画の主人公が信じられない事態に呆然とする姿が笑えた。

大都市のスラム街を彷徨していたレジーは、小型犬だが威勢のいいバグに野良生活のルールを教わる。その後、マギーとハンターを誘い、飼い主のチンコにかみつく計画を進める。

街には残飯があふれ食べ物には困らない。性欲を満たすガジェットにも事欠かない。人間に迷惑をかけない限りやりたい放題。もう飼い主の顔色を窺わなくてもいい。だが、大いなる解放感を味わったのにレジーの飼い主への思いは消えず、むしろ彼の中ではいい思い出になっている。このあたり、「犬」という生き物の卑屈さがにじみ出ていて、つい友人知人に当てはめてしまう。それぞれ性格が違う4頭の犬たちを周囲の人に置き換えてみるのも楽しい。4頭同時に庭の置物に性器をこすりつけたりするが、メスにもそうした習性があるのか?

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

さまざまな試練と困難を乗り越え、ついにレジーたちは飼い主の家の近くまで戻ってくる。そこで再びレジーの「飼い犬根性」が頭をもたげ、むしろ飼い主への憎しみよりも懐かしさが勝るようになり、バグと袂を分かつ。安全安定を捨て自分の道を切り開くか、飼いならされて愛玩動物として生きるか。そんな選択を観客にも迫る作品だった。

監督     ジョシュ・グリーンバウム
出演     ソフィア・ベルガラソフィア・ベルガラ/ウィル・フォーテ
ナンバー     208
オススメ度     ★★★*


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