こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

DAU. ナターシャ

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何の変哲もない食堂に集まった男たちが食事の合間に話題にしているのは、大量殺りく兵器の有効性。従業員たちはその話を耳にしても、慣れているのか顔色一つ変えない。物語は、旧ソ連の秘密軍事基地内での日常を描く。ピラミッド型のカプセルに入れられた被験者の生体反応を計測する怪しげな実験室。外国人らしい研究者が地元科学者の指揮を執っている。食堂では若い後輩と反りが合わずフラストレーションをため込んでいる初老のウエイトレスがわが身の不運を嘆いている。2人の女がいがみ合いながらもテーブルをはさみお互いを嫌っていることに乾杯するシーンは、ここ以外に行き場所がない彼女たちの、先の見えない閉塞感が逆説的に再現されていた。

営業終了後、食堂の後片付けをするナターシャは同僚のオーリャに床掃除を言いつけるが、オーリャは帰ろうとする。ある夜、ナターシャは実験施設の指導者・リュックに誘われる。

フランス人らしいリュックとは言葉は通じない。そこは男と女、2人きりになると早速ベッドになだれ込む。彼らは50代なのだろう、すっかり張りを失った肌をさらして肉体をむさぼりあう。初老男女のセックスのリアリティに迫る映像は、抱き合い服を脱がし愛撫し挿入しフィニッシュし余韻を楽しむ、そのすべての過程をカメラに収める。美貌のAV女優と引き締まった男優が演じる煽情的なカラミではなく、うんざりするような行為を延々と見せられるのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後、ナターシャは特務機関の取り調べを受ける。尋問と拷問でナターシャの心は折れ、早くこの場から逃れたいと尋問官の言いなりに書類を作成する。ヤマもオチもないエピソードが延々繰り返されるこの作品を見に来た観客は、きっとナターシャの抱える苦悩と苦痛を共有する羽目になるだろう。。。

監督  イリヤ・フルジャノフスキー/エカテリーナ・エルテリ
出演  ナターリヤ・ベレジナヤ/ウラジーミル・アジッポ/オリガ・シカバルニャ/リュック・ビジェ/アレクセイ・ブリノフ
ナンバー  45
オススメ度  ★★


↓公式サイト↓
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