こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ナポレオン

王妃の首が飛んだ。議会内の反乱で独裁者もギロチン送り。革命の混乱が続く時代、男は市民のデモを鎮圧するために砲弾をぶち込み、無残に破壊された死体の山に眉一つ動かさず満足する。物語は、内乱を収め外国の干渉を排除し、ヨーロッパの覇権を目指した男の光と陰を描く。軍人としての機略は抜群で難敵をあっさりと排除する。政治家としても巧みに風を読み瞬く間に権力の階段を駆けのぼる。自らをアレクサンダー大王カエサルになぞらえる男の壮大な人生は、危険を顧みない勇気と歯向かう者を容赦なく殺す無慈悲とチャンスを見極める勘と周到に打った布石が成功に導くと教えてくれる。一方で、心から愛した妻との間には子供ができず、涙ながらに離縁する。国家を手に入れてもなおままならない運命に苦悩する姿は、彼もひとりの人間だったと訴える。

トゥーロンの闘いで英軍を撃退したナポレオンはパリの王党派も一掃し名声を得る。ジョセフィーヌと結婚後、エジプトに遠征するが、ジョセフィーヌの浮気の噂を聞き急遽帰国する。

ナポレオンの一目ぼれで始まったジョセフィーヌとの関係だったが、ナポレオンは強烈な押しと彼女の弱みを突いて結婚に持ち込む。その間、恋愛という雰囲気はふたりの間にはない。ナポレオンには性欲、ジョセフィーヌには打算があるだけ。それでもお互いに心の支えになるなど相手を必要とはしている。ロマンティックなムードを提供するでもなく、むむむと口を横に動かしてジョセフィーヌをベッドに誘うナポレオン。結局服を着たまま後背立位で果てる。彼にとってセックスは夫婦の愛を確かめ合うのではなく子孫を残すための行為、その合理性が印象的だった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

欧大陸を手中に収めたナポレオンはロシア遠征を決行するが焦土戦術に敗れ敗走、その責任を取ってエルバ島に軟禁される。私兵を率いパリに進軍する道中、正規軍を説得して味方に引き入れるあたりナポレオンの真骨頂だろう。男の器が示される名場面だった。

監督     リドリー・スコット
出演     ホアキン・フェニックス/バネッサ・カービー/タハール・ラヒム/マーク・ボナー/ルパート・エベレット/ユーセフ・カーコア
ナンバー     216
オススメ度     ★★★


↓公式サイト↓
https://www.napoleon-movie.jp/