こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

怪物の木こり

サイコパスを自任し、むしろサイコパスであることを誇りに思っているかのような弁護士は、歪んだ選民思想で殺人を繰り返す。だが、彼のすぐ近くで想像を絶するような連続殺人事件が起こると、彼のアイデンティティは徐々に崩壊していく。物語は、頭蓋を割られ脳が持ちだされた死体が数体見つかったことから起きる、警察と犯人、そして命を狙われる弁護士の虚々実々の駆け引きを描く。被害者が殺されるのは因果応報という刑事は、過去の闇を抱えている。被害者たちは、かつて脳にチップを埋め込まれ精神や感情にある種の制御を受けていて、他人を思いやる気持ちが欠如している。さらに人間の脳を改造しようとするマッドサイエンティストの野望が恐ろしい。そしてそんな科学者に生み出されたより知能指数の高いサイコパスは厄介だ。

怪物の木こりマスクをかぶった男に殴打された弁護士の二宮は入院、頭部レントゲン写真で特殊なチップが埋められていると医師に指摘される。それは非人道的と禁止された技術だった。

正業であれ悪事であれ、己の計画を滞りなく進めるためには感情に流されてはならない。共感力が欠如した二宮は冷徹に邪魔者を消し、利用できる人間はできるだけ利用する。二宮には杉谷というサイコパス仲間がいて一緒に快楽殺人を繰り返していると思われる。この2人の仲も微妙で、決して固い友情で結ばれているわけではなく単に利害が一致しているだけ。一方、事件を追う警察ではプロファイラーとベテラン刑事が事件の核心に近づいているようで的外れな捜査を繰り返す。保険金殺人容疑者の存在が浮かび上がると、もはや人間関係はカオスとなる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

三池崇史らしいエッジの効いた映像は、良心とサイコパスの間で揺らめく男たちの気持ちをヴィヴィッドに再現し、スピード感があふれている。ただ、染谷将太扮する杉谷以外のキャラは奥行きがなく自己主張が強いだけ。二宮・プロファイラー・真犯人の3極構造にしたのがごちゃごちゃとまとまりのない展開になった原因ではないだろうか。

監督     三池崇史
出演     亀梨和也/菜々緒/吉岡里帆/柚希礼音/みのすけ/堀部圭亮/渋川清彦/染谷将太/中村獅童
ナンバー     218
オススメ度     ★★


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