こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

枯れ葉

善意がアダとなって職を失った女と飲酒が原因でクビになった男。行き場をなくしたふたりはお互いの傷をなめ合うように付き合い始める。物語は、思い通りにいかない人生にうんざりしている男女のささやかな交流を描く。退屈な日常を淡々とやり過ごす。夢や希望など遠い昔に捨てた。そもそもそんなものはなかったのかもしれない。だが年金暮らしにはまだ早い。頼れる親族もいない。一応最低限の衣食住と自由は保障され貧困状態ではないが、親しい人間関係もない。そんな状況で不器用に愛を求めあう熟年男女の姿は喜怒哀楽を共有できる相手がいる幸せを訴える。ふたりなら喜びは二倍になり悲しみは半分にできるのだ。極限まで抑制された感情表現と絶妙の間はそこはかとないおかしみを醸し出し、小市民としてしか生きられなかった人々の達観を再現する。

カラオケ店で出会ったアンサとホラッパ。映画館で別れ際にアンサは電話番号をホラッパに渡すが、ホラッパはそのメモをなくし、彼女に連絡を取りたくても取れない状態が続く。

なんとかアンサに会いたいホラッパは映画館の前でアンサを待ち続ける。入り口前に捨てられた吸い殻の山でホラッパがどれほどの時間を過ごしていたかを示した後、アンサがその吸い殻を見るシーンは、ふたりをつなぐ糸がまだ切れていないことを暗示するが、タバコを吸うだけでなく吸い殻を捨てっぱなしにするようなマナーの悪い男は今どき敬遠されるのではないだろうか。失職の原因も仕事中の飲酒。一方でうつ病だと自分を甘やかす。ホラッパがもう少し真面目な人間ならば共感できるポイントがあったのだが。初デートがゾンビ映画なのは、「タクシー・ドライバー」が意中の女をポルノ映画に誘った以上に、ホラッパの歪んだ孤独を感じさせる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ふたりは無事再会し、アンサはホラッパを自宅に招き食事を振る舞う。その際も、無礼な態度をとってアンサを怒らせるホラッパ。こんな身勝手な男を甘やかしすぎではないだろうか。

監督     アキ・カウリスマキ
出演     アルマ・ポウスティ/ユッシ・バタネン
ナンバー     228
オススメ度     ★★*


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