こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ウィッシュ

願いとは、突き詰めれば自分が幸せになりたいという欲望。叶えばまた次の欲望が芽生え、叶わなければ不満がたまっていく。ならばいっそのこと願いそのものを放棄してしまえば心安らかに生きられるのではないか。物語は、魔法使いが治める王国で、自分の頭で考える大切さに気付いた少女の革命を描く。王の魔法と統治のおかげで人々は安らかな暮らしを享受している。批判的な意見を持つ者や魂の自由を求めている者は、願いを封じられ無害で退屈な人間に貶められている。経済的安定・発展の対価としての思想チェックと自由への弾圧。そして、運命の星に導かれた少女は人々だけでなく生けとし生けるものすべての思いこそが尊重されるべきと知る。まるで習近平中国に反旗を翻し敗れた周庭の闘いをなぞっているようだった。その結末は正反対だが。

王の面接を受けたアーシャは、国民の願いを集めたドームで祖父の願いが叶えられないまま放置されているのを見て、体制に疑問を覚える。その夜、星に導かれアーシャは天啓を受ける。

星は、王のように人々を従順にさせる魔法ではなく、希望を与える魔法を使い、アーシャの心に眠るきわめて民主主義的な思想を呼び覚まし、彼女を闘士に変えていく。王の下で禄を食む不満分子も彼女に合流、王の欺瞞を民衆の前で暴こうとする。そして始まったゲリラ戦。アーシャの仲間にも王の側近にも裏切り者が出て一進一退の手に汗握る攻防が繰り広げられる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

結局、「豊かな暮らしは保証されるが自由は制限される」と「自由な競争を保証するが結果は自己責任」の二者択一を迫っているように思える。もちろん西欧的価値観に染まった民主主義国の勝ち組の人々は後者を善とし、強権主義国家の価値観しか知らない人や貧困層は前者を選ぶだろう。でも、誰もが夢を持ちそれを追いかけなければならないなんて、それはそれで窮屈な世の中のような気がする。それに、成功した革命の指導者は例外なく独裁者になるが、王を倒したアーシャにもその気配を感じさせる毒が効いていた。

監督     クリス・バック/ファウン・ビーラスンソーン
出演     
ナンバー     229
オススメ度     ★★★★


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