こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

屋根裏のラジャー

星を追い空を翔け自由の風を全身に受ける。想像の中ではなんでもできる。どこへでも行ける。ファンタスティックな映像がめくるめくスピードで展開するプロローグは、ディテール豊かにイマジネーションを再現する。物語は、少女の心の中で創り上げられた幻影が、己の存在と少女の命を守るために奮闘する姿を描く。少女が交通事故で意識を失うと幻影の居場所がなくなる。行き場を失った幻影は、子供たちが抱いていた幻影や創作意欲が豊富だった過去のアーティストの幻影たちが集まる街にいざなわれる。そこは人間が蒐集してきた知識や物語がぎっしりと詰まった図書館で、同じ境遇の幻影たちが余生を送っている。まるで人々から忘れ去られた事実をなかったことにするかのように、幻影たちがはしゃぎ楽しんでいるふりをしているのが哀しかった。

父を亡くし母に育てられているアマンダは、イマジナリーと呼ばれる空想の友人・ラジャーといつも遊んでいる。ある日、イマジナリーハンターのバンディングがアマンダの家にやってくる。

危険を感じたアマンダはラジャーと逃げるがクルマと衝突、重傷でこん睡状態になる。アマンダが死んだと誤解したラジャーはエミリーをはじめとする他の孤児イマジナリーと友人になるが、その後もバンディングに何度も襲われる。仲間に助けられ事なきを得るが、逆にバンディングの襲撃でアマンダが生きていると知る。このあたり、人間の世界とは物理法則も価値観も違うイマジナリーたちの、思うようにいかなかったときのじれったさが奇妙なおかしさを醸し出す。バンディングのそばに仕える黒い少女のイマジナリーがなぜダークサイドに落ちてしまったのか、その苦悩と葛藤を知りたくなった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

誰もがワクワクしたりドキドキしたり幸せな充足やヒーローになった興奮を味わいたくて空想を働かせる。だがいつしか現実の前で、そんな夢たちは目標に置き換えられてしまう。失われた記憶、ただそれでも時々思い出すことで人生はより豊かになるとこの作品は教えてくれる。

監督     百瀬義行
出演     寺田心/鈴木梨央/安藤サクラ/仲里依紗/杉咲花/山田孝之/ イッセー尾形/かぬか光明
ナンバー     227
オススメ度     ★★★


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