はじめて潜った深い海、自分より大きな魚が近づいてきた。岩礁の主のとして振舞うその魚は知性と感情を備えているように見えた。やがて少女は、魚と魚が棲む環境はかけがえがないと学んだ。物語は、オーストラリア沿岸の小さな漁村で、開発に反対する母娘の闘いを描く。小型ボートで慎ましく漁をしていた。決して乱獲はせず、個体数が減らないように気を付けてきた。それなのに開発業者は重機で海岸を均し地引網で水産資源を根こそぎにしていく。そして明らかになっていく母娘の確執。守るべき海は、生まれ育った地元なのか、それとも世界中に広がっているのか。観光宣伝用映像のように水が透き通っているわけではないし楽園の美しさもないけれど、彼女たちは固有種と生息域を保護しようとする。その熱意は自然と共存する意味を教えてくれる。
サンゴ礁の実態を調査中のアビーは、母が脳卒中で倒れたと知らされ病院に駆けつける。意識も病状も回復し退院するが、母はアビーの問いかけに一切答えない。
アビーは母に話しかけるうちに、2人で過ごした過去に思いをはせる。父を亡くしてずっと2人きりだった。泳ぎと素潜りをアビーに叩きこんだ母は、この海で暮らすために必要なスキルも伝授する。なによりも大切にしているのは生態系。だが、アビーが思春期になると、故郷の海にこだわる母と世界の海に関心を持ち始めたアビーの間に齟齬が生まれる。娘を理想的に育てたい母と己の夢を追いたいアビー。アビーはいまや母の開発反対活動の過激さを恥じている。アビーの親離れに不機嫌になる母の孤独がリアルに再現されていた。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
アビーは村を出て進学する。海洋学者になったことで、ティーンエイジャーのころの夢はかなった。だが今は次の目標が定まらない。アビーはおそらく村を出て以来帰っていないのだろう。それでも母の深い思いを知るうちに、自分のすべきことが見えてくる。解決すべき問題は目の前にあり、その積み重ねこそが人生であると、クジラの群れを見守るアビーの瞳が訴えていた。
監督 ロバート・コノリー
出演 ミア・ワシコウスカ/ラダ・ミッチェル/イルサ・フォグ/アリエル・ドノヒュー/リズ・アレクサンダー/エリック・バナ
ナンバー 7
オススメ度 ★★★