こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

緑の夜

緊張した面持ちで乗客のチェックをする女保安員。彼女の胸の内を見透かしたように不敵な笑みを浮かべる緑髪の女。ふとしたきっかけで知り合った2人は後戻りできない旅に出る。物語は、運び屋が横取りしたドラッグを捌くために奔走する2人の女の暴走を描く。保安員は外国出身ゆえ人権を制限されているのか夫の暴力に耐えている。緑髪の女はもともと失うものがないのか、ちょっとしたことでは動じない。ひとりではどん詰まりになるのは見えている。ならば協力して運命を切り開いていこう。だが、夜の大都会を駆けずり回り打開策を探っても、彼女たちを利用するばかりの男たちが手ぐすねを引いて待ち伏せしているだけ。それでも決して絶望せず走り続ける女たちの瞳は自分の意思で行動する喜びに満ちていた。

緑髪の女のドラッグを換金して自由になろうとするジャは、夫の家に立ち寄る。そこでDVを受けるが緑髪の女に助けられ、行きずりの男から奪ったルームキーでホテルの部屋に一泊する。

緑髪の女の組織はジャの上司を買収しているらしく、悪徳刑事も一枚噛んでいる。男たちは、ジャが緑髪の女と一緒にいることを察知し、2人の行方を追っている。ゆく当ても頼れる人脈もない2人は少しずつ逃げ場を失っていく。捕まったらおそらく命はない。交渉の余地もない。それでもまだ生きている。あきらめなければなんとかなるかもしれない。根拠のない希望を信じて彷徨する2人は、束縛から解き放たれた現在を精一杯謳歌しようとする。もはや彼女たちに未来はないのはわかっている。だからこそ、一瞬だけでいいから人生を輝かせたい。そんな、抑圧された日常を送ってきた女たちの心の叫びが切なくも共感を呼ぶ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

説明的な描写はほとんどなく、彼女たちの過去や置かれた状況は推察するしかない。だからこそ、感情がすぐに顔に出てしまうジャよりも、まずい状況になっても飄々とした態度を崩さない緑髪の女の笑顔がミステリアスかつ魅力的だった。ソウルではヘルメットなしでバイクに乗ってもOKなのか。。。

監督     ハン・シュアイ
出演     ファン・ビンビン/イ・ジュヨン/キム・ヨンホ/キム・ミングィ
ナンバー     18
オススメ度     ★★★


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