こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ダイアリー・オブ・ザ・デッド

otello2008-11-15

ダイアリー・オブ・ザ・デッド DIARTY OF THE DEAD


ポイント ★★★*
DATE 08/9/3
THEATER KT
監督 ジョージ・A・ロメロ
ナンバー 214
出演 ショーン・ロバーツ/ジョシュア・クローズ/ミシェル・モーガン/フィリップ・リチオ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


世界が崩壊しようとしているとき、カメラを持つものは何をすべきか。かつては対象と直接関わるより、記録し伝えることが彼らの使命とされていた。しかし、ネット時代の到来で誰もがビデオカメラと発表の場を持つようになった現代において、プロとアマの境界は限りなく曖昧になり、ただ人目を引く場面を撮っただけでなく、閲覧者が役に立てることができる資料的価値のあるデータをウェブ上に残した者だけが賞賛を得る。人びとが死に、蘇り、再び死んでいく様子を命がけで撮影した映像はアクセス数で評価されるのだ。


世界中で死体が蘇って人間を襲い、襲われた人間もゾンビ化する事件が頻発。自主映画撮影中の大学生グループは安全な場所を求めてトレーラーで逃げるが、どこにいってもゾンビだらけ。ディレクターのジェイソンは見たことすべてを録画しようとする。


報道機関が麻痺し、インターネットだけが頼りになったとき、どれだけ正確な情報を供給できるかが送り手の生命線となる。ジェイソンは傍観者となり、人間がゾンビと戦う姿を公開することで公共に利益を提供しようとするのだ。最初はレンズを向けられることを嫌がっていた仲間も、その重要性を知り、協力するようになっていく。感染したクルーを殺す一方、自分がゾンビとなって他人を襲うかもしれないという恐怖と戦いながら、学生たちはドライブを続ける。それは希望がないことが分っていても、誰もがそのことを口にせず、希望があるフリをしている絶望への旅。ゾンビ映画の体裁をとりながら、終末へ向かう人間の心理を細やかに描く手法は見事だ。


やがて一行は友人の屋敷に到着してひと息つくが、そこもゾンビに包囲される。そしてジェイソンもゾンビに噛まれるが、恋人のデブラが彼の遺志を継ぎ、ゾンビに覆われた地上に向かって動画を配信し続ける。要するにロメロ監督は、パソコン編集の普及と撮影機材の低価格化で安易に映像作家を目指す若者たちに、こう問うているのだ。「殺されてもカメラを回し続ける覚悟はあるのか」と。


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