こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

おかえり、はやぶさ

otello2012-03-12

おかえり、はやぶさ

ポイント ★★*
監督 本木克英
出演 藤原竜也/杏/三浦友和/前田旺志郎/森口瑤子/田中直樹/宮崎美子/豊原功補/大杉漣/中村梅雀
ナンバー 61
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

宇宙探査は莫大な国家予算をつぎ込むほどの価値のあるものなのか。確かに、小惑星組成が分かったからといってすぐに効果があらわれるわけではないが、そこで開発された技術や思いがけない発見はいつしか民生品に応用・実用化され暮らしの質の向上につながる。さらに壮大なプロジェクトを成し遂げる過程で、夢を実現する力が国民に希望を与え、金銭では測りがたい影響をもたらしているのだ。映画は、火星探査に失敗し責任を取る形で引退した科学者と同じ道に進んだ息子の関係を軸に、度重なる危機に面したときに人はいかに振る舞うべきかを描いていく。対象は子どもで、小難しい理論や組織論・リーダー論、人間の複雑な感情といったポイントはあっさりスルーし、はやぶさ計画を優しく噛み砕く解説に腐心している。

小惑星イトカワに向けて発射された惑星探査機はやぶさは、エンジン停止、着陸・サンプル採取、通信不能、燃料漏れといった様々なトラブルをスタッフの知恵で解決、無事地球に戻ってくる。長い旅の途中、地球でははやぶさに関わる様々な研究者・技術者がじっと宇宙を見守っていた。

「成功とは意欲を失わずに失敗を繰り返すこと」というチャーチルの言葉を引用して、あきらめない気持ちが不可能を可能にする時が人生にはたびたびあることを証明していく。追い詰められて絞り出した苦し紛れのアイデアが次々とはやぶさを復活させていくエピソードの数々は、政治も経済も沈滞する現代の日本には発想の転換が必要と説いているようだ。

◆以下 結末に触れています◆

打ち上げから帰還まで7年、大半の期間ははやぶさに異常がないかを見守るだけ退屈な日々が続いていたはず。その間、プロジェクトチームは何をしていたのだろう。大橋はイカロス計画、野村は広報活動と、仕事をかけもちしているらしいが、その他のスタッフの“ほとんど変わり映えしないけれどなくてならない大切な仕事”も見てみたかった。はやぶさ計画の栄光は大勢の無名の人々の努力に支えられていた事実を、子供たちに知らしめる意味でも。。。

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