こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ダーク・シャドウ

otello2012-05-28

ダーク・シャドウ DARK SHADOWS

オススメ度 ★★
監督 ティム・バートン
出演 ジョニー・デップ/エヴァ・グリーン/クロエ・グレース・モレッツ/ヘレナ・ボナム=カーター/ミシェル・ファイファー/ジャッキー・アール・ヘイリー/ベラ・ヒースコート/ガリバー・マクグラス
ナンバー 130
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

愛と憎しみ、永遠の命と苦痛。それらを抱えたまま封印されていた男は200年ぶりに復活し、時代の変化に目を丸くしながらも没落した末裔を立て直そうとする。古臭い言い回しと立ち居振る舞い、そのギャップに加えてヴァンパイアであることを隠そうともせず、一家の主としての態度も尊大。しかも、自分が犯した不貞のツケも払わなければならない。映画は、彼と魔女の古い因縁と新しい恋を通じて、真実の愛とは何かを問う。しかし、孤独な変人がふと見せるヒューマンな一面に切なさといとおしさを描きこむティム・バートン流の世界観を感じられないのは、1972年のニューイングランドという舞台設定が馴染み薄いものだからだろう。せめて主人公が21世紀のNYに蘇っていれば、彼の違和感を笑えたはずだ。

18世紀、愛人だった魔女・アンジェリークに婚約者を殺され、彼女の手でヴァンパイアに変えられた上に生き埋めにされたバーナバスは200年後に掘り起こされる。栄華を極めた豪邸はすっかり寂れ、子孫も役立たず。バーナバスは家業の再建を図り、アンジーと名乗って生き続けるアンジェリークと対決する。

バーナバスと子孫たちのかみ合わないやり取りが見どころなのだが、'72年当時の文化や風俗、人々の考え方を皮膚感覚として理解していないと面白さが分からない。さらにバーナバスのみならず彼の家族や屋敷の住人すべてがキャラの立った奇人揃いでは、彼らがどの程度当時の常識からズレているのか判断しかねる。結果としてどの登場人物のリアクションに距離を覚えてしまい、凝りに凝った邸宅内のディテールばかりが目立っていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

むしろバーナバス一族にとっては敵でも、名士となって地元に繁栄をもたらすアンジーのほうが、エゴも持つが情も深い人間的な部分に共感できた。叶わぬ思いゆえに嫉妬が憎悪に成長し呪いをかけるが、一方でいつかバーナバスを振り向かせると希望は捨てていない。感情の落差が激しい彼女がヒロインなら、違ったアプローチでこの作品を楽しめたかもしれない。

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