こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

コラテラル COLLATERAL

otello2004-11-04

コラテラル COLLATERAL

ポイント ★★★*
DATE 04/10/23
THEATER 109シネマズ木場
監督 マイケル・マン
ナンバー 127
出演 トム・クルーズ/ジェイミー・フォックス/ジェイダ・ピンケット・スミス/マークラファロ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

しがないタクシー運転手として一生を終わるか、それとも一発勝負に出て起業してみるか。リムジン会社の経営者になるという夢を見ているだけで満足していた男が、冷酷な殺し屋と出合ったことから自分を見つめなおす。失敗を恐れてあきらめるか、度胸を据えて挑戦するか。殺し屋と出会うことで、タクシー運転手は濃密な人生の縮図のような一夜を過ごす。

マックスが運転するタクシーにヴィンセントという殺し屋が乗り込み、5人の人間を殺す間運転手を務めろという。ヴィンセントは独特の世界観を持っていてマックスを友人のように扱うが、5人目のターゲットがマックスの知り合いだったことからマックスは行動を起こす。

トム・クルーズが人間としての感情が欠落した殺し屋を不気味に演じている。銃殺しておいて「銃弾が殺した」と言いってのけ、何の痛痒もなく確実にターゲットを仕留めていく。すべては計算ずくで確実な仕事振り。そういう男がタクシー運転手と人生について語り合う場面がいい。マックスに将来の夢を語らせる一方、夢に向かって何の行動も起こしていないマックスの心を喝破する。殺生与奪の権を握りながらマックスに説教するヴィンセント。ターゲットの資料を捨てたマックスに、ギャングの下に資料を取りに行けと命令し、マックスは見事にその難題を乗り越える。マックスの成長を喜ぶかのようなヴィンセントの表情が、この心は壊れているが頭脳は明晰な殺し屋の複雑な人生を物語る。

最悪の体験を通じて確実に人間として行動力を身につけていく。マックスはヴィンセントから自分に足りなかったものを確実に吸収していく。受身でいては何も得られない。時にはハッタリも必要だが自分を信じて走り出すことが何よりも大切なのだ。中盤からマックスの表情がおびえ・困惑から怒りに変わり、命の危険を冒しても決然と行動するにいたっては頼もしくさえあった。そういう人間の変化をジェイミ・フォックスは見事に演じ分けていた。


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