こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

フライトプラン

otello2006-01-30

フライトプラン FLIGHTPLAN


ポイント ★★
DATE 05/11/22
THEATER ブエナビスタ
監督 ロベルト・シュヴェンケ
ナンバー 144
出演 ジョディ・フォスター/ピーター・サースガード/ショーン・ビーン/ケイト・ビーハン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


自分が狂っているのか、周囲が何かを企んでいるのか。勝手に旅客機の貨物室や機械室に入り、酸素マスクのスイッチまでオンにしてしまう。手錠で拘束されても納得できないうちはなんとか動き回ろうとする。圧倒的に不利な状況の中で自分を信じ、周りの迷惑を考えず思ったことを行動に移すヒロインの姿は迷惑オバサンそのものだ。ジョディ・フォスターは狂気かと思えるほどの母の愛と意志の強さを、顔の筋肉を総動員して演じきる。


ベルリンで夫を亡くしたカイルは、残された娘・ジュリアとともにNY行きの飛行機に乗る。カイルの睡眠中にジュリアが姿を消し、飛行機内を探し回るがジュリアの姿はどこにもない。それどころか、ジュリアが乗機した記録すらなく、乗客乗員の誰もがジュリアを覚えていない。


映画は夫を失ったカイルが最初からいないはずの娘の幻影を追い求めるというスタンスを取り続け、娘を見失ったカイルの苛立ち、不安、恐怖を延々と描写する。最初は迷子探しに協力的だったクルーや乗客もやがてカイルの頭がおかしいのではと眉をひそめ始める。そんな状況下でも決して自分の考えを曲げず、髪を振り乱すカイルは狂気に憑かれているようだ。そんな描写の連続にうんざりし始めた頃、やっとどんでん返しがやってくる。


ジュリアの失踪は、カイルの夫の棺に爆弾を隠していた航空保安官と協力者のスチュワーデスが仕組んだ罠だという。つまり、夫が死ぬ前から計画された犯行だったということだ。しかし、飛行中の航空機の中で子供を誘拐するなどという、不確定要素の高い犯罪を実行するだろうか。もちろん飛行機の乗客など自分の前後に座っている客に関心はないだろうし、クルーも大差ないだろう。また犯人側にも計画どおりカイルを殺すチャンスは何度もあったのに、なぜか取り逃がす。主人公の不安定な心理状態を丁寧に描くことでサスペンスを盛り上げることには成功しているが、取ってつけたようなどんでん返しのためにやれやれという徒労感しか残らなかった。


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