おとなのけんか CARNAGE
ポイント ★★★*
監督 ロマン・ポランスキー
出演 ジョディ・フォスター/ケイト・ウィンスレット、クリストフ・ヴォルツ/ジョン・C・ライリー
ナンバー 54
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
穏やかな話しぶりなのに、言葉の端々に批判を込め相手を責めようとする。言われたほうも笑顔を崩さず皮肉たっぷりに反論する。原因は先方、決して自分は間違っていないと思い込んでいる二組の夫婦が、子供のけんかの解釈をめぐって堂々巡りの議論を何度も蒸し返す。暴力をふるったのは確かに行き過ぎだが、そこに至るまでにどれほど悪意を浴びせられたのか。映画は、表面だけ取り繕ろう大人たちが徐々に本性をむき出しにし、やがて各々の配偶者に対してまで攻撃を加えていく過程を、舞台劇そのままの速いせりふ回しで繰り広げていく。敵味方入り乱れ、良識を忘れた挙句、みな我こそが一番正しいと主張し始める様子がコミカルな中にも共感を呼ぶ。
アランとナンシー夫婦の息子がペネロペとマイケルの息子を棒で殴り大けがをさせた事件の和解文書で、ペネロピが過剰な表現を使ったためにアランがクレームをつける。2人はお互いの言葉尻をとらえて絡みあい、ナンシーとマイケルもいつしか体面をかなぐり捨て胸に浮かんだ言葉を口にする。
間の悪いところでたびたびアランのケータイにコールが入り話の腰が折られる。話し合いはそっちのけで仕事に没入するアランにみな顔を顰めるがアランは一向にお構いなし、多忙をアピールし大物だと強調するかのような尊大な態度にみな苛立ちを隠せない。ケータイという道具を使いこなすのではなく、縛られているアランの姿は強烈な文明批判となって笑いを誘う。
◆以下 結末に触れています◆
4人の論点は次々とあらぬ方向に飛び、息子のことでは共同戦線を張る夫婦もそれ以外の話題では相手夫婦に同調者がいたりする。時には夫同士・妻同士意見が一致し、ついには夫婦間で普段口にできなかった本音が飛び出したりして、修羅場と化した客間は収拾がつかなくなる。親たちの思惑など関係なくハムスターはしぶとく生き延びているし子供たちは仲良く遊んでいる、そんなオチもエスプリに満ちていた。。。