こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アンジェラ

otello2006-05-17

アンジェラ ANGEL-A


ポイント ★★
DATE 06/5/13
THEATER ワーナーマイカルつきみ野
監督 リュック・ベッソン
ナンバー 72
出演 ジャメル・ドゥブーズ/リー・ラスメッセン/ジルベール・メルキ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


セーヌ川エッフェル塔コンコルド広場・・・パリの旧市街地はしっとりとしたモノクロ映像がよく似合う。手持ちカメラで登場人物の行動を丹念に追い、アップを多用することで驚愕・恐怖・苦悩といった感情の発露を描く。リュック・ベッソンヌーヴェルヴァーグを意識したのだろうか。その表現法は今となっては新鮮味はなく、ヒロインが人間離れしたプロポーションの持ち主でなければ40年前の作品といわれても違和感はない。果たしてそこで描かれる物語も他者によって自分の人生を見つめなおすという陳腐なものだった。


ヤクザ連中から借金の返済を迫られたアンドレは資金繰りの目処もなくセーヌ川に飛び込んで自殺しようとする。ふと横を見ると絶世の美女が川に飛び込み、アンドレは思わず彼女を助ける。彼女はアンジェラと名乗り、アンドレに付きまとった挙句、彼の負債を帳消しにしていく。


絶望の淵で自らの命を絶とうとするアンドレの最後に見るビジョンが、美しい女と数日を共にするというのは男の空想としては理解できる。しかし彼女は自分が本物の守護天使であると言い張り、巨大な翼を広げて空を飛ぶのだ。守護天使が幸運をもたらすなどという考え方自体が小学女児並みの発想なのに、その天使が実際に姿を見せて不幸な男を助けるなどというさらに幼稚なアイデアをよく映画化できたものだ。


自分を愛せず、他人だけでなく自分も偽って生きてきたアンドレが真実に目覚める過程も結局はアンジェラ頼み。きっかけはアンジェラが与えても、ヤクザのボスと対峙する時もアンドレ自身がひとりでやり遂げなければ意味がない。一応、アンドレは自信を取り戻し、愛し始めたアンジェラをこの世にとどめようと空から引き摺り下ろす。その挙句、2人はその後も愛し合ってメデタシメデタシ。これで満足できるナイーブな観客はそれほどいないだろう。


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