こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ワイルドスピードx3

otello2006-09-15

ワイルドスピードx3
THE FAST AND THE FURIOUS:TOKYO DRIFT

ポイント ★★★
DATE 06/7/26
THEATER UIP
監督 ジャスティン・リン
ナンバー 119
出演 ルーカス・ブラック/ナタリー・ケリー/ブライアン・ティー/サン・カン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


ただひたすらスピードとドリフトの技術を競う。ストーリーなど二の次、駐車場で、街中で、そしてヘアピンカーブが連続する山道でいかに速く自動車を操れるか。めくるめく疾走感にあふれた映像と重低音のサウンドがアドレナリンを分泌させ、ハンドブレーキを使っての横滑りの超技巧が手に汗を握らせる。カースタントの粋を集めたアクションの数々はもはや芸術的ともいえる水準に達している。映画は見るものを思考停止状態に誘い見終わった後に何の余韻も残さないが、スピードを体感させるための映画という見事なまでの割りきりが爽快感を残す。


暴走行為を繰り返し放校処分になったショーンは東京の高校に転校、そこで早速DKという男と勝負するが惨敗。ハンという男の下でドリフト技術を学び腕を上げていく。そしてDKの恋人ニーラをめぐるいざこざから、2人は再びドリフト勝負に挑む。


ショーンもニーラもどう見ても高校生に見えないし、他のスピード狂たちも老けた顔ばかり。およそ物語の部分にはリアリティのかけらもない。むしろカーレース部分をより強調するためにあえてディテールを軽視している感すらある。それでも前2作のスピードだけの勝負よりも、ドリフトという高度なテクニックを要する操車術を連続して見せることでスクリーンから目が離せなくなる。特に立体駐車場の螺旋通路をドリフト走行だけで登っていくシーンは神業の世界。排気量や馬力といったエンジンの性能ではない、4つの車輪をハンドル、アクセル、ブレーキ、ギアチェンジだけで意図通りに自在にコントロールしようとする純粋な思想には共鳴する。


エンジン、サスペンション、そしてタイヤ。あらゆるパーツをレースのためにチューンナップし、走りに特化したマシンに改造する。そのスポーツカーへの愛、スピードへの憧れ、そしてハンドル捌きに対するリスペクト。作り手のスポーツカーへの思い入れと、それを観客に実感させようという意気込みが熱いほど伝わってくる作品だった。


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