カンバセーションズ CONVERSATIONS WITH OTHER WOMEN
ポイント ★★★
DATE 07/2/6
THEATER シネスイッチ銀座
監督 ハンス・カノーザ
ナンバー 25
出演 ヘレナ・ボナム・カーター/アーロン・エッカート/ノラ・ザヘットナー/エリック・アイデム
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
男は女との思い出を大切にし、些細なことまで覚えている。女はそんな過去のことよりも、その男が自分の現在と未来に何をもたらしてくれるか計算している。男と女、何とか主導権を握ろうと駆け引きをするうちに昔の甘い記憶が鮮明によみがり、ほとんど会話だけで構成された一夜限りの恋に人生を凝縮する。画面を左右2分割し、カメラは男女それぞれの立場で表情をとらえ感情を描く。そこには決して理解しあえないけれど、コインの表裏のように切り離せない男と女の関係が、濃密に煮詰められる。
結婚式のパーティで出会った中年の男と女は、お互いの身の上話をするうちにダンスを踊り始める。初対面を装っているが、実は2人は元夫婦。男は出会ったころのみずみずしいエピソードを披露するが、女には楽しかった記憶はない。2人はゲームを楽しむかのように語り合うが、どこか心の底では本心を隠している。
今はお互いにパートナーがいるのに、やはり別れた相手は気にかかる。相手が自分と付き合っていたときより幸福になっていれば悔しいし、不幸になっていれば悲しい。しかし、この2人の状況はイーブンで、とりあえず現状に大きな不満はなさそうだ。それでも一緒にいられる時間が限られると、この瞬間を逃したくないという思いが勝る。今夜の再会を味気ないものにするときっと後悔するという男の言葉に、女がベッドを共にする決心するシーンに象徴されるように、女は未来の不安を取り除いてやれば安心する。一方で、男は2人の共通体験をたびたび語るが、女はそれを作り話と否定する。
映画は、男女の心の構造の違いを同時に見せることで秀逸な恋愛指南書になっている。男は過去の成功体験を反芻するが、女は未来の幸福を予測する。そのあたりの心理描写と会話が非常にリアルで、身につまされるシーンがたびたび出てくる。女は恋を夢見ても決して恋に溺れない。そんな恋愛のリアリズムを見せ付けられてもやめられないのが恋愛なのだ。