こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

大帝の剣

otello2007-04-10

大帝の剣


ポイント ★*
DATE 07/4/7
THEATER 109グランベリーモール
監督 堤幸彦
ナンバー 68
出演 阿部寛/長谷川京子/宮藤官九郎/竹内力
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


幕府転覆の陰謀にさすらいの剣士、宇宙人までが登場するという壮大稀有な物語は、派手なアクションだけでなく大掛かりな特撮・CGを駆使して描かれる。しかし、テーマが薄っぺらな上、中途半端にコミカルな味付けをしてしまったために、せっかく手間をかけたヴィジュアルが間抜けな物に見えてしまう。さらに江守徹のしつこいまでのナレーションが輪をかけて作品を陳腐に貶める。結局、阿部寛ひとりがはしゃぎまわっている印象しか残らない。


オリハルコンという地球外金属で作られた剣を持つ源九郎は、豊臣の残党と合流、オリハルコンで作られた三種の神器の残り二つを探して徳川方の忍者と戦う羽目になる。そこに同じく三種の神器を求めるエイリアンが双方に乗り移り、すさまじい争奪戦が繰り広げられる。


もう少し登場人物を整理するべきだろう。白い顔の忍者や天草四郎など、そもそも何のために出てきたのか。意味ありげな描き方をされている割には、主人公の源九郎どころか物語にまったく絡んでこない。見せ場となるべき殺陣のシーンでも、源九郎はただ馬鹿でかい剣を振り回しているか宙を飛んでいるだけで、まったくイマジネーションに欠けている。エイリアンに寄生されたマタギや忍者の形相も、ただおどろおどろしさの強調に終始する。


脚本は、おそらく原作の要素を無理やり押し込むことだけに心を砕いたのだろう。肝心の登場人物、特に主人公である源九郎のキャラクターにまったく奥行きがない。めっぽう強く剣を振り回したくてうずうずしているが、そもそもなぜ命がけで三種の神器を求めているのか。祖父の遺言というのは分かるが、本人の強い願望がまったく見えてこないのだ。また、こういった「お宝探し」ものならさまざまな伏線を用意して、ミステリーの要素も入れなければ飽きてくるのに、そういう工夫もない。夢枕獏の名と時代劇とエイリアンの融合などという奇抜な設定だけで、人間や物語を描くということを完全に忘れている。


↓メルマガ登録はこちらから↓