こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

エリザベス:ゴールデン・エイジ

otello2008-02-20

エリザベス:ゴールデン・エイジ ELIZABETH: THE GOLDEN AGE


ポイント ★★*
DATE 08/2/17
THEATER THYK
監督 シェカール・カプール
ナンバー 42
出演 ケイト・ブランシェット/ジェフリー・ラッシュ/クライヴ・オーウェン/サマンサ・モートン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


国家と結婚したと宣言し、恋することを自らに禁じた女王。その気高さとは裏腹に内憂外患に心を痛め、暗殺者の存在に安眠すらおぼつかない日々が続く。そんな時に現れた、女王の威光に媚びないひとりの粗野な男の存在が彼女を、ひいては英国の運命を変えていく。映画は国を支配する地位にありながら自由な生活もままならない女王と、進取の気性と冒険心に富み欧州と新世界をまたにかける男の交流を通じて、キリスト教世界の宗教対立に端を発した裏切りと謀略の渦巻くパワーゲームを豪華絢爛たる筆致で描く。


スペイン王の脅威に晒されていたイングランドは、国内のカトリック勢力にも手を焼いていた。エリザベス女王は、彼女を狙うスコットランド女王・メアリーの放った刺客に狙われるが、危ういところで命を拾う。やがてスペインが無敵艦隊を英国に派遣する。


眉を剃り、髪を短くし、まるで肖像画から抜け出てきたようにエリザベスを演じるケイト・ブランシェット。最高指導者としての凛とした態度から、権謀術数の外交戦に神経をすり減らし、ローリーへの恋心を胸に秘め、最後はイングランドのシンボルとして甲冑に身を包んで兵士を鼓舞する。まさしく英国の歴史の再現。栄光の時代を築いた女王の絵巻物を見ているようだ。ただ、英国王を君主として仰がない国民にとっては、スペイン撃破後の神々しく玉座に君臨する彼女の姿を見せられてもすこし引いてしまう。


メアリーのヒットマンがエリザベス暗殺に失敗たのは、スペイン王の計略。メアリーを処刑させることでイングランドに介入する口実を得るという恐るべき陰謀に、国際政治の闇の部分がよく描かれている。最大のヤマ場である海戦シーンは、派手なアクションよりイングランドの焼き討ち船が投錨したスペイン艦隊に体当たり攻撃するだけで迫力に欠ける。燃え盛る戦艦や泳ぐ馬を水中から見上げるようなカメラワークなどで表現に工夫しているが、手に汗握るような興奮からは程遠い。結局、自国史を学んだ英国民に向けた教科書的な内容、その一方で英国は力強い指導者を求めているということだろうか。


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