こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ロビン・フッド

otello2010-10-08

ロビン・フッド Robin Hood

ポイント ★★★
監督 リドリー・スコット
出演 ラッセル・クロウ/ケイト・ブランシェット/ウィリアム・ハート/マーク・ストロング/マックス・フォン・シドー
ナンバー 227
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


伝説に荒唐無稽な解釈を加えるよりも、彼が生きた時代の空気を細部まで極めることで血の通った人間としての本質を追究する。それは、暴政からの自由、抑圧からの解放を求める魂の叫び。映画は、“正直と勇敢”を心に強く持つ男が己の使命に目覚め、言葉と行動を通じて民衆のヒーローになっていく過程を描く。英雄は生まれつくのではなく、素養を持った者が見出され、自覚し、運命に導かれて初めて誕生する。偶然を必然にする意志の力こそが奇跡を呼ぶのだ。


英王リチャードに随行しフランスの城攻めに参加したロビンは、王の戦死で早々と前線を離れるが、王冠を移送中の英小隊が仏軍に襲われているのを見て助太刀する。そこでロクスリーという騎士から剣を託され、彼の故郷に向かう。


冒頭の攻城戦、英王自ら先陣に立ち突撃する。石造りの小じんまりした城ながら守りは固く、いきおい矢が主な武器となる。英軍は弓を引き仏軍は石弓で応戦。間を縫うように騎兵が疾走しバリケードで守られた歩兵が破城槌で城門を砕く。激戦の様子は地味ながら重量感にあふれ、過剰な刺激に頼らずに12〜3世紀の合戦を再現しようとする。しかもそのリアリティは、ロビンが帷子を脱ぐシーンで、防具のずっしりとした重みが象徴する。血沸き肉躍るスーパーヒーローの大活劇とはほど遠いが、動きの鈍さこそ当時の軍人が身に着けていた甲冑の重さを饒舌に物語っていた。


◆以下 結末に触れています◆


やがて仏王の意をくんだ裏切り者の手引きで仏軍が英国に上陸してくるが、ここでもロビンは海岸の敵に崖の上から矢の雨を降らせて先制攻撃を仕掛ける。鉄砲が発明される以前は矢という飛び道具が戦場の主役。矢を射る姿が非常にスタイリッシュなロビン・フッドのイメージを、ラッセル・クロウは見事に体現していた。その後、ジョン王の裏切りでロビンは追われる身となり、森に隠れ彼を頭目とするコミュニティが作られる。リドリー・スコットがフィーチャーする新しいロビン・フッド像は、よりロビンを身近な存在として感じさせてくれた。