こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

プライスレス

otello2008-03-07

プライスレス HORS DE PRIX


ポイント ★★*
DATE 07/12/19
THEATER 映画美学校
監督 ピエール・サルヴァドーリ
ナンバー 259
出演 オドレイ・トトゥ/ガド・エルマレ/マリー=クリスティーヌ・アダム/ヴァーノン・ドプチェフ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


高級ブランドの服や小物を値札も見ずに買い漁り、支払いはすべて男。少し甘えたり焦らしたりオヤジの心を思い通りにコントロールするさまは、まさに小悪魔。可愛く見せるテクニックを日々磨き、己の価値を高めていく。女を究めた生き方はどれだけカネをかけてくれるかが愛のバロメーターで、カネのない男は相手にしない。そんな割り切った人生を送る「プロの愛人」をオドレイ・トトゥはチャーミングに演じる。


ホテルマンのジャンは深夜のバーで居眠りしているとイレーヌという若い女に出会う。とっさにジャンは客を装い、ジャンを金持ちの実業家と勘違いしたイレーヌは彼をベッドに誘う。やがてジャンの正体がばれイレーヌは去るが、ジャンは彼女を追う。


ホテルのスイートに住み、日々消費に費やす欧州の上流階級。独身者は1人の寂しさを紛らわせるために若くて見栄えのいいパートナーを見つけようとする。その需要に応える人間が当然必要でホテル側も黙認している。イレーヌは喜ばせ楽しませるだけでなく、時に怒らせたりし、パトロンに「手放したくない」思わせる駆け引きが非常にうまい。ただ、空気を読む機転やある種の教養も必須なのに、イレーヌにはそのあたりが欠けているのが物足りない。もっと高級娼婦のように、懐刀的な役割を担わせれば物語に奥行きが出たはずだ。


ジャンは有閑マダムに囲われる一方、イレーヌへの想いもエスカレートする。イレーヌは飾り物としてではない自分を愛してくれるジャンに気持が傾いていく。その物欲至上主義から本当の愛に目覚めていくという過程は予想通りの展開だ。しかし、いつ捨てられるかわからない不安定な暮らしをしているイレーヌに長期的な戦略がなく、もっとしたたかに生き抜く知恵や彼女の過去を少しでも描いていれば、しっかりとした足場を持つヒロインという印象を受けたはず。コメディに徹するのはよいが、彼女の現在だけではジャンとの未来もすぐに破局が待っている気がしてならない。


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