こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ホビット 決戦のゆくえ

otello2014-12-05

ホビット 決戦のゆくえ
The Hobbit: The Battle of the Five Armies

監督 ピーター・ジャクソン
出演 イアン・マッケラン/マーティン・フリーマン/リチャード・アーミテージ/ベエバンジェリン・リリー/ルーク・エバンス/オーランド・ブルーム/
ナンバー 281
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

壮大という言葉では小さすぎる、繊細という言葉ではおおざっぱすぎる。常人の想像力と処理能力をはるかに超越した巨大な世界観と細密に再現されたディテールは、3Dのうねりとなって視野を覆い聴覚を刺激する。その圧倒的な情報量にもはや思考は追いつけず、ただスクリーンとサウンドを感覚で受け止めるのみ。じっくりと鑑賞するのではない、映画に身を委ねる。この作品が目指すのは異次元の映像体験なのだ。物語は黄金の山を巡って様々な種族が覇権を争うなか、それぞれが己の内なる欲望をむき出しにしていく姿を描く。愛や友情・約束や信頼といった善意や良心など、権力や財宝に対する執着の前では弱点になりかねない。そんな状況の中で、主人公もまた指輪の誘惑に負けそうになる。各々が自らの思惑で戦を始める展開に、“正義”とは、立場の違いによっていかようにもなる陳腐な価値観に過ぎないことを訴える。

はなれ山から解き放たれた竜は湖の町を焼き尽くすがバルドの矢に倒れる。バルドはエルフたちと手を組み、黄金を奪還したトーリンに町の再建のための分け前を求める。だが、トーリンは拒否し援軍を恃む。

同時に竜の死を知ったサウロンもオークの大軍団を動員し、はなれ山は人間・エルフ・ドワーフ連合軍対オーク軍の一大決戦場となる。小さきホビットのビルボは指輪の力で気配を消し戦場のメッセンジャーくらいしかできないが、それでも精一杯トドワーフたちの力になろうとする。一応、オークのみが“邪悪な勢力”という共通認識だが、程度の差こそあれ誰もが邪心を持っている。黄金を隠し逃げようとする湖の町の元副官が、あらゆる登場人物の内面に潜む闇を象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

斬り、刺し、射抜き、叩き潰し、突き落とす等、後半は重量感あふれるバトルシーンで彩られ、多種多彩なキャラクターが得意の武器を使って八面六臂の大活躍を見せる。ただ、オーク軍は、人間・エルフ軍とドワーフ軍が戦ってから参戦していれば圧勝していたはず。“漁夫の利”を知らないオークって、やっぱり見た目通り知性も低いのだろうか。。。

オススメ度 ★★★

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