こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

THE LAST MESSAGE 海猿

otello2010-09-22

THE LAST MESSAGE 海猿

ポイント ★★
監督 羽住英一郎
出演 伊藤英明/加藤あい/佐藤隆太/加藤雅也/吹石一恵/三浦翔平/時任三郎
ナンバー 225
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


主人公はもはや潜水士の中ではベテランの域に達し、職場では後輩を指導する立場、家庭では一児の父となっている。その暑苦しいまでの情熱は、退路が絶たれた現場では希望への道しるべとなるが、妻子への愛の形で表現されるとこってりしすぎて食傷気味。見せ場となるべき大型プラント炎上・崩落場面にも臨場感が乏しく、3Dの特性が生かされていない。どうしてもっと炎や海水、鉄骨や鋼管などがスクリーンから飛び出すような映像を用意しないのか。これならば普通の2Dで見た方が画面が暗くならない分奇麗な映像が楽しめたはずだ。


日本海に浮かぶ海上天然ガス掘削施設にドリル船が衝突、火災が発生する。ところが、設計士が防火扉を閉めたため仙崎を始め若手潜水士・女性医師・作業員・設計士が施設内に取り残される。折しも台風が接近し救助のヘリが飛べなくなったうえ、さらなる火災が起きる。


ロープで降下中にバランスを崩したり、足場のない水中でもがいていたりする仲間を腕一本で引き上げる「ファイト 一発!」的なシーンは多いのだが、その他のアクションが全体的にアイデア不足。閉鎖空間での救助活動だけにあまり派手に動けないのだろうが、それでも鍛え上げた救命潜水士だからこその訓練の賜物を見せてほしかった。また、次から次に仙崎たちを襲う危機が大味。皮膚感覚で感じるような水や炎、落下物がいかに危険かを再現しないと、その先にある「一つ間違えたら死」という恐怖が見えてこないではないか。


◆以下 結末に触れています◆


物語はそんなパニックを切りぬける人々の戦いよりも、仙崎の帰りを心配しながら待つ妻の姿を延々描くことでエモーショナルな方向に舵を切る。ここでも仙崎の自己犠牲で残りの生存者を救い、彼が妻に残した愛のメッセージをしつこいくらいに見せて、仙崎が死んだのではと見る者をミスリードする。変に技巧に走りずぎて結局空振りするようなヘタな仕掛けには鼻白むばかりだった。