こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

GAMER ゲーマー

otello2010-12-08

GAMER ゲーマー


ポイント ★★
監督 ネヴェルダインテイラー
出演 ジェラルド・バトラー/マイケル・C・ホール/アンバー・ヴァレッタ/ローガン・ラーマン/アリソン・ローマン/テリー・クルーズ
ナンバー 290
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


銃弾をかいくぐり次々と敵を倒していく。男の斜め上方からの視点はまるで戦場にいるかのような臨場感。彼が体の向きを変えると、視点も同じ角度だけ動く、映像はそんなシューティングゲームの感覚をリアルに再現する。生身の人間がゲームの登場人物になってプレーヤーに操縦され、実弾で殺し合いをする究極の“殺人ゲーム”。物語はそこから脱走した主人公が世界制覇を目論むプログラマーと対決する過程を描く。コンピューターと人工細胞が融合した近未来、テクノロジーは使いこなせば利益をもたらすが、それに頼るようになっても決して幸せになれないことをこの映画は訴える。


死刑囚のケーブルはスレイヤーというオンラインゲームのキャラクターとして、遠隔操作されながら激しい戦闘を生き延びている。ある日、ヒューマンという組織の手助けでスレイヤーから脱獄に成功したケーブルは、スレイヤーの作者・キャッスルを探す。


バーチャルな空間を表現するために自由に動き回る、めくるめくカメラワークが素晴らしい。一方で刑務所内の風景は色彩がなく無機質で非現実的。この時代の人々にとってはバーチャルこそが日常で、トラブルに満ちた現実には目を背けて生きていることを強烈に意識させる。さらに特殊な脳細胞を移植された男女を操って、モニターの前に居ながらにして他人の人生を体験できる不気味さ。セクシーな女をコントロールしているプレーヤーが醜く太ったオタクなのが、ネットに依存した人類の末路を象徴し、皮肉が効いている。


◆以下 結末に触れています◆


やがてケーブルはキャッスルの元にたどり着くが、キャッスルに精神も肉体も支配された戦闘員たちが待ち受け、ケーブルに襲い掛かる。ケーブルもまたキャッスルに思考を乗っ取られキャッスルを殺せない。いわゆるマインドコントロールを人工細胞で行うのが可能かというのが命題なのだが、バーチャル空間のディテールに比べ、その理論的な土台の弱さゆえ独特の世界観を構築するまでに至っていなかったのが残念だ。