こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ガリバー旅行記

otello2011-04-18

ガリバー旅行記 GULLIVER'S TRAVELS

ポイント ★★*
監督 ロブ・レターマン
出演 ジャック・ブラック/エミリー・ブラント/アマンダ・ピート/ジェイソン・シーゲル
ナンバー 92
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


必要なのは一歩踏み出す勇気。仕事も恋も“自分なんかこの程度のもの”と上昇志向を持てなかった男が、思いがけない事件に巻き込まれて変わらざるを得ない状況に追い込まれていく。特別な能力を持つ人間、それはただデカいだけなのだが、並外れたパワーを行使するときには責任が伴うのを学んで、大切なことから逃げてばかりの人生に初めて立ち向かう。小人の国の町並みをすべて自己宣伝の看板に書きかえさせる場面では、ディテールに凝って笑いを誘うかたわら、大きな男に宿る心のスケールの小ささが凝縮されていた。そんな彼が未来を己の手で切り開いていく決意をした時、人としての真価が問われるのだ。


新聞社のメール係・ガリバーは憧れの編集者・ダーシーに見栄を張ってバミューダ諸島の取材をする羽目に。途中、ボートが嵐に遭遇し、気がつくと小人の国・リリパットの海岸に打ち上げられていた。


偶然王女と国王を救って英雄視されるガリバー。一方で王女に恋をするホレイショの手助けをしたりもする。努力をしなくても転がり込んでくる幸運、現実の世界では味わった経験のない優越感に浸るシーンがとても楽しい。憎むべき敵が実の父親だったり、氷の海での海難事故など彼のほら話にも拍車がかかり、さらに敵国の艦隊の砲撃を贅肉で跳ね返すなど、いかにも子供が喜びそうなシチュエーションをふんだんに用意して退屈させない。


◆以下 結末に触れています◆


その後、裏切り者のエドワード将軍が作った戦闘ロボットにあっけなく敗れたガリバーは追放されるが、ホレイショに励まされてやっと戦う意思を固める。映画はそこで、誰かに「がんばれ」と言うのなら、その言葉を口にした本人はそれ以上に頑張った実績が伴わないと説得力に欠けるという事実を示す。他人に関わって運命を変えようとするのなら己がまず行動しなければならないと、あくまでコメディの形で観客に提示してくれる。ジャック・ブラックの太った体が教訓臭さ見事に抑えていた。