こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ラビット・ホラー3D

otello2011-09-21

ラビット・ホラー3D

ポイント ★★
監督 清水崇
出演 満島ひかり/大森南朋/緒川たまき澁谷武尊/香川照之
ナンバー 222
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


落下していくのか上昇していくのか、ヒッチコック映画をより深化させたらせん階段の奥行きはめまいの感覚。それは、スクリーンから飛び出してくるウサギのぬいぐるみのシーンとともに3D映画の特性をいかんなく発揮している。さらに、幻覚と白日夢が複雑にシンクロするエピソードも、副次的な構造がまさに立体的。そこにはもはや物語としての整合性は感じられず、迷宮に取り残されたような既視感の連続は歪んだ精神の矛盾としてのみ理解される。その非現実の世界は、映像の怖さよりも音楽のおどろおどろしさのほうが存在感を主張していた。


死にかけたウサギを殺したことから大悟は悪夢を見るようになり、異次元に引き込まれる。それを知った姉のキリコは大悟を連れ戻そうとするが、いつしか感情が彼女に伝播し、キリコもまた異界に落ちていく。


着ぐるみのウサギのモチーフは、無表情が不気味で、特に凶器を振り回すわけでもないのに怨念がにじみ出ている。一方のウサギのぬいぐるみは、力のない弱きものの象徴。この大小2匹のウサギが時と場所を変え、何度も姉弟を狂気の裏側に連れて行く。納戸の奥に隠された秘密と封印されたキリコの記憶。何が現実でどこまでが虚構なのか、このふたつが明らかになっていく過程で衝撃的な真実が扉を開く。


◆以下 結末に触れています◆


物語の前半は大悟の主観で進行していくが、肝心の大悟自体がキリコの創作なのはご都合主義ではないだろうか。キリコの妄想が生んだキャラクターの視点というのは、そもそもありえないはず。それとも、キリコは病気だから何でもありなのか。そのあたり、納得のいく答えは思い浮かばないが、もちろん映画は謎に満ちた人間の心を説明しようとはしない。だが、せっかく3Dの表現技術を得たのなら、ホラーでもなんでもないヒロインの脳内現象だけでなく、もっと即物的な恐怖を描いてもよかったはずだ。。。