フッテージ SINISTER
監督 スコット・デリクソン
出演 イーサン・ホーク/ジュリエット・ライナンス/フレッド・ダルトン・トンプソン/ジェームズ・ランソン/クレア・フォーリー/マイケル・ホール・ダダリオ
ナンバー 115
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
折れた太い枝の重量で、首をロープで縛られた4人の男女が吊り上げられる。そんな、首つり殺人を映したフィルムが見る者を不気味な世界にいざなう。しかしそれはほんの始まり。呪われた家、不穏な物音、古代バビロニアの伝説などが主人公の心を苛んでいく。その過程で、8ミリフィルムというアナログな媒体に記録された惨劇はパソコン上にデジタル変換されるが、そこから生まれるおぞましさはかえって増幅する。超常現象もツールの進化に合わせて変化するのだ。映画は、一家惨殺事件の調査をするノンフィクション作家が、自らもまた悪意の罠に足を取られ恐怖の底に沈んでいく姿を描く。おどろおどろしさを抑え、物理的な作用より心理的に追い詰める演出が効果的だ。
新作準備のために田舎の一軒家に引っ越したエリソンは、屋根裏部屋で映写機と数本の8ミリフィルムを見つける。いずれのフィルムにも一家惨殺現場と謎の男が収められ、子供1人が失踪していた。エリソンは首つり事件と他の事件の関連を探り始める。
娘の落書き、息子の発作。異変は子供たちから始まり、エリソンも異音に悩まされる。一見、アイデアが浮かばずスランプに陥ったエリソンの妄想にも見える。だが、殺人現場に残されたマークの起源や副保安官のリサーチに頼るうちに、それらは人間の怨念が原因ではなく、子供の魂を食う悪魔の仕業であると判明する。そして邪悪で残酷な力が家族に危険を及ぼそうとしていると知り、エリソンは執筆を断念する。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
一瞬顔を見せるブギーマン、生ける屍となった子供たち、眠れぬ夜、突然の金属音といった、ホラー映画の定石通りの驚かせ方だけでなく、8ミリフィルムで徐々に嫌悪感をあおり、ただならぬことに首を突っ込んでしまったエリソンの不安を募らせていく手法は非常に洗練されている。さらにスクリーンの中からこちら側の現実が操られているような違和感がしつこく付きまとう。血なまぐささよりも知的な香りのする作品だった。
オススメ度 ★★*