こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

スリーデイズ

otello2011-09-28

スリーデイズ THE NEXT THREE DAYS

ポイント ★★*
監督 ポール・ハギス
出演 ラッセル・クロウ/エリザベス・バンクス/ブライアン・デネヒーレニー・ジェームズ/オリヴィア・ワイルド/タイ・シンプキンス/ヘレン・ケアリー/リーアム・ニーソン
ナンバー 232
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


愛する妻は絶対に無実、その思いだけが男を支え、狂気にも似た信念が彼を暴力にまみれた世界にいざなっていく。それは彼にとっての正義。法と権力の前では無力でも、アイデアと実行力、情報とカネ、そして引き返さない覚悟を決めて自分の土俵に持ち込めば国家を相手にしても恐れる必要はない。映画は、身に覚えのない罪で濡れ衣を着せられた妻を救いだそうとする主人公の執念を通じ、あきらめずにひとりで戦う男の意志の強さを描く。


ララが殺人容疑で実刑判決を受けるが、ララの夫・ジョンは上訴を断念し、彼女を脱獄させる計画を練りはじめる。元脱獄囚からアドバイスを受け、刑務所の日常を観察し、パスポートと身分証を偽造し、資金をかき集める過程で、ジョンは様々な障害を克服していく。


ジョンは証拠や証人を集めてララの潔白を明らかにするのではなく、あくまでララの奪還に固執する。それはもはや国に対する信頼を100%失っていたからだろう。市民の人生など一顧だにしない警察・検察・裁判官といった巨大な官僚機構への挑戦状。“完全”を求められるはずの司法制度に風穴をあけることでその不完全さを証明する闘いなのだ。そして、元脱獄囚の「脱獄自体より逃げ続ける方が困難」の言葉通り、ララの身柄を奪ってからの逃走経路をいかに確保するか。わずか10数分で橋は封鎖され、30数分であらゆる道路に検問が張り付く。鉄道の駅も見張られている状況で、衣服を変え息子を連れ戻した上、家族そろっての逃亡。このあたり、些細なミスも命取りになる緊迫感がスクリーンからあふれ出す。


◆以下 結末に触れています◆


病院から脱出し、地下鉄に紛れ込んだ後SUVに乗り換え、さらに老夫婦を同乗させる。一見追い詰められて行き当たりばったりに見えるジョンの行動が、すべて警察の裏をかく計算だったというオチも鮮やかだ。ただ、息子を動物園に迎えに行ったり、空港の搭乗口で無駄にサスペンスを盛り上げたり、元ネタにないエピソードを挿入したせいで終盤が緩慢になってしまったのは残念だったが。。。