こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ゴールデンカムイ

突撃ラッパと共に塹壕を飛び出し、銃声砲火の中を敵陣まで走る。銃弾に当たっても倒れない。砲弾が炸裂しても止まらない。銃剣で刺されても怯まない。あらゆる火器・武器の攻撃をものともせず単身敵の塹壕に飛び込み、たちまち死体の山を築いていく主人公の圧倒的な強靭さに目を見張った。物語は、北の大地に隠された大量の金塊を巡って繰り広げられる駆け引きを描く。先住民と手を組んだ退役兵の若者は不殺の約束を守りながら手掛かりを追う。狂信的リーダーに率いられた軍人集団は組織力で勝負してくる。そして前時代の亡霊までが金塊をものにせんと暗躍する。それぞれのグループがけん制し合い出し抜き合いながら金塊のありかを記した地図を集める過程は躍動感にあふれ、自然と調和しながら生きる先住民の知恵がディテール豊かに再現されていた。

二百三高地戦で “不死身の杉元” の武名をとどろかせた杉元は「アイヌの金塊」の話を耳にする。アイヌの娘・アシリパに助けられた縁で、彼女と共に金塊の地図を探す旅に出る。

地図は24人の脱獄囚の体に彫られた暗号を集めなければ完成しない。噂を手繰るうちに、陸軍中尉・鶴見と脱獄囚のボス・土方も地図を集めていると知る杉元たち。脱獄囚を捕えても刺青の絵柄を写生するにとどめる杉元・アシリパコンビに対し、鶴見らは平気で殺して皮をはいでいく。死なない肉体を持った杉元、戦傷で脳機能が亢進した鶴見、さらに80歳超の高齢ながらいまだ意気軒高な土方と、癖の濃いキャラがそれぞれの野望を胸にフロンティアを暴れまわる姿は胸躍る体験だった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、杉元とアシリパが北海道の雄大な雪景色を背景に旅を続けるシーンは、ほとんどがスタジオで撮影されているのかその寒さがまったく伝わってこない。吐息の白さ、鍋から立ち上る湯気、まつ毛に張り付いた氷など、氷点下の厳寒を表現する方法はいくらであるはず。ヒグマや白狼も作り物ぽかったし、馬橇上の格闘もスピード感が欠けていた。杉元の冒険はまだ始まったばかり、続編に期待したい。

監督     久保茂昭
出演     山崎賢人/山田杏奈/眞栄田郷敦/工藤阿須加/柳俊太郎/矢本悠馬/勝矢/高畑充希/マキタスポーツ/玉木宏/舘ひろし
ナンバー     16
オススメ度     ★★*


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