こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ヤング≒アダルト

otello2011-12-17

ヤング≒アダルト YOUNG ADULT

ポイント ★★★*
監督 ジェイソン・ライトマン
出演 シャーリーズ・セロン/パトリック・ウィルソン/パットン・オズワルト/エリザベス・リーサー
ナンバー 296
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


若さと美しさと聡明さに満ちていたハイスクール時代は特別な存在だった。20年近く経った今、往時のきらめきは衰えていないが、都会の片隅に忘れ去られ、自ら創作する小説の中でしかその“魅力”を発揮できない。映画はそんな中年にさしかかったヒロインが、再び人生の輝きを取り戻そうと田舎に帰り、別の意味で特別な存在になっていた事実を発見する過程を描く。都会で知的な職業につき、華やかな暮らしが羨望の的になると思っていたのに、変わり映えのしない田舎町の同窓生たちのほうがみな幸せそうな日々を送っている。こんなはずじゃなかったと思いつつ、それでも現実から目を背ける彼女がリアルで痛々しい。


ティーン小説のゴーストライタ―・メイビスに、元カレ・バディから赤ちゃんが生まれたとのメールが届く。バディとヨリを戻せばスランプから脱出できると閃いたメイビスは早速故郷の町にクルマを飛ばす。


かつての友人たちはみな自分の生活があり、それなりに満足している。バディもすっかりパパの顔。メイビスは日常に飼いならされた彼らを「ゾンビ」と呼ぶが、地元に残った人々にはいまだ大人になれないメイビスは異星人に思えたに違いない。だらしない格好のメイビスが念入りにメークし、別人のように変身する姿は、まさにこれからハンティングに出かけるような気合の入れ方だが、地元のバーでは娼婦にしか見えないあたり、彼女の意識のずれがおかしくも哀しい。


◆以下 結末に触れています◆


バディは父になった喜びを語り予防線を張っているが、メイビスにはその態度を好意と解釈してしまう。そしてバディにきっぱりと拒絶されてやっと“かわいそうな女”と同情されていたことを知る。それは彼女にとって屈辱以外の何物でもない。しかし、人はそう簡単には変われない。確かにかなりヘコんだが、都会に戻ったらまた強気な勘違い女に戻っているのではと予感させるラストは、人間の愚かさに対する愛おしさが凝縮されていた。


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