臨場 劇場版
オススメ度 ★★*
監督 橋本一
出演 内野聖陽/松下由樹/渡辺大/平山浩行/高嶋政伸/段田安則/若村麻由美/柄本佑/平田満/長塚京三
ナンバー 123
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
ボサボサの頭に大きく見開いた眼、広げた鼻孔、むき出しの歯。一匹狼風の容貌は組織の中で独特のオーラを放っている。しかし、一旦殺人事件の現場に出向くと、男の目は死体に遺されたどんな些細な痕跡も見逃さず、鼻は見えない異常を嗅ぎわける。「俺のとは違うなあ」と、常識と見た目にとらわれがちな同僚に異議を唱え、とことんまで真実を追求する検視官を内野聖陽が怪演。時代劇のように芝居がかった所作は警察組織における主人公のポジションを象徴するとともに、警察モノのヒーローは刑事だけではないと訴えている。
無差別通り魔殺人事件の犯人が心神喪失で無罪判決を受けて2年、彼を担当した弁護士と精神科医が相次いで殺害される。検視官の倉石は、弁護士の死亡推定時刻に疑問を持ち、精神科医の死体も詳しく調べようとする。
殺人事件現場に駆け付けた検視官は、たとえ屋外であっても現場に設えられたテントの中で被害者の死因や傷跡を徹底的に調べる。その際、遺体の衣服をすべて脱がせた上、定規をあて写真を取り所見を述べていく。もちろん手を合わせ死者への尊厳は忘れていないが、一度検視に入るともはや人ではなくモノを見る目になる。そうした検視官の立ち居振る舞いが、仕事に対する誇りと死体を扱う緊張感が入り混じった心情をリアルに再現していた。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
連続殺人事件は警視庁と神奈川県警の合同捜査になるが、両組織のせめぎ合いや思い込み捜査、過去の誤認逮捕などが明るみに出るばかりで、捜査員の聞き込みでは犯人像はなかなか絞り込めない。そんな中、倉石らが鑑識ならではの視点で事件の核心に迫っていく過程は、謎が謎を呼ぶ本格ミステリーの様相を呈していく。さらに、愛する者を奪われた人々の苦悩と哀しみ、奪った者への怒りと憎しみ、それらが複雑に絡み合って織りなされる物語は最後までパワーが衰えなかった。ただ、浦部巡査に病院にいる通り魔を襲わせる必要はあったのか? 安永教授は浦部の襲撃を知っていたのか? このあたりの展開が偶然に頼り過ぎているのではないだろうか。。。