こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

フリークスアウト 

異形異能ゆえ親に疎まれた。世間に蔑まれた。どこにも居場所がない彼らを救ったのは見世物小屋だった。そこでは彼らの能力が忌まわしいものではなく才能として認められ、カネに換えることができる。物語は、4人のサーカス団員が捕らえられた団長を救出するために奮闘する姿を描く。敵はマッドサイエンティスト、強大な権力を持ち、予知夢で先回りする。集められた異能者は次々と人体実験にかけられ、気に入らないと処分される。そうとは知らず敵の元を訪ねた団員たちは困難な状況にさらされていく。彼の潜在意識には数時間後に起きる出来事や独裁者の自決・体制の崩壊という近未来だけでなく21世紀の日常までが浮かび、その情景をスケッチに残す。iPhoneが浸透した世界、彼にはユートピアに見えただろうか。

ドイツ軍管理下のローマ、失業した団員たち3人は巡業中のベルリン・サーカスに職を求める。電撃を操るマティルデだけは団長を捜し続け、ゲリラ部隊に合流する。

虫を操るチェンチオ、磁石男のマリオ、怪力多毛症のフルヴィオそしてマティルデの4人が芸を見せるプロローグは、寓話にいざなうようなファンタジックな映像。それがいきなり空襲によって暴力的に引き裂かれる。サーカス団員たちが打ち捨てられた瓦礫と死体をよけながら逃走するシーンが、つかの間の憩いすら許されない戦時下の市民生活への圧迫を饒舌に物語る。もはや戦争とは無縁ではいられない、米国行きの夢が閉ざされた団員たちは団長に頼る人生ではなく自分で運命を切り開く道を選ぶ。巻き込まれた以上後には引けない、決意を固め行動に移す過程は苦悩と逡巡に満ち、己の特殊能力を呪いヒーローなど目指していない人々の心の動きをリアルに再現していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後マティルデは3人と合流、団長の乗ったユダヤ人護送列車を追う。そしてそれぞれが自らの能力を生かしてドイツ軍と戦う。彼らだけでなく傷痍軍人や障害者を集めたゲリラ部隊などさまざまな “個性” が相まみえる戦闘シーンは、多様性への配慮なのだろう。。。

監督     フリークスアウト
出演     クラウディオ・サンタマリア/アウロラ・ジョビナッツォ/ ピエトロ・カステリット/ジャンカルロ・マルティニ/ジョルジョ・ティラバッシ/マックス・マッツォッタ/フランツ・ロゴフスキ
ナンバー     92
オススメ度     ★★*


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