こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

プリズナーズ

otello2014-03-08

プリズナーズ PRISONERS

監督 ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演 ヒュー・ジャックマン/ジェイク・ギレンホール/ポール・ダノ/ビオラデイビス/マリア・ベロ/テレンス・ハワード/メリッサ・レオ
ナンバー 53
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

愛にあふれた家庭、平和で静かな自然に囲まれた環境、長い付き合いの親しい隣人。順調だったはずの暮らしが、幼い娘の突然の不在で一変する。犯罪に巻き込まれたのは間違いない、ただ生きていてほしいと願って残された両親は眠れぬ夜を過ごす。ところが容疑者は否認し、何の手がかりも得られぬまま証拠不十分で自由になる。物語は、娘の失踪事件を自力で解決するため暴挙に走る父親と、人間関係と過去を地道に調査する捜査官が、葛藤と軋轢に苦悩する姿を描く。冷たい雨に沈んだ重苦しい映像と神経質な音楽は登場人物の不安と焦燥・怒りと憎悪を緊張感たっぷりに再現し、圧倒的な重圧となってスクリーンから押し寄せる。

ケラー一家が友人宅でパーティ中、彼らの娘2人が家に戻らない。ロキ刑事は誘拐事件としてアレックスを逮捕するが、彼は10歳児程度の知能しかなく釈放、だが、ケラーはアレックスの口から思わぬ言葉を聞き、彼が犯人と確信する。

警察を当てにできないケラーはアレックスを拉致、隠れ家で凄惨な拷問を加えるが、アレックスは口を割らない。一方のロキは現場で見かけた不審な男を追い、彼の自宅で迷路図と大量の血痕が付いた子供の衣服を見つける。果たしてアレックスは無実なのか、首謀者は別にいるのか。このあたり、信仰に篤いケラーの暴力性と論理を重んじるロキを対照的に扱うことで神の無力と人間の理性の対立を際立たせる。そして、まったく先の読めない展開と暴走する感情が強烈な引力となって、観客を映画に引きずり込んでいく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

あくまで直情的に娘の行方を探すケラー。告解者を殺した神父を調べ、迷路や蛇といった象徴の意味を解読して、神への祈りを絶望で染めようとする真犯人にたどりつこうとするロキ。刑事と被害者家族の関係がいつしか不信と反目に変わり、やがて彼らの運命が再び交わるとき、被害者が加害者になり加害者もまた被害者だったという衝撃の真実が浮かび上がる。娘が失くしたホイッスルが、救いのない世界にわずかな希望をもたらしていた。

オススメ度 ★★★★

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