カンフー・ジャングル 一個人的武林
監督 テディ・チャン
出演 ドニー・イェン/ワン・バオチャン/チャーリー・ヤン/ミシェル・バイ/アレックス・フォン/ルイス・ファン/シー・シンユー
ナンバー 186
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
その流派の達人たちが次々と血祭りに上げられていく。彼らが極めた拳法で。誰の仕業なのか、何が目的なのか、物語は武術家連続殺人事件を追う刑事に協力を申し出た武術家が壮絶な闘いに巻き込まれていく姿を描く。驚異的な修業を自らに課して身体障害を克服した男が欲するのは“最強”の称号、最愛の妻を亡くして正気を失った彼はただただ己の腕前を誇示せんと命を賭けた真剣勝負に挑む。神出鬼没、警察の裏をかき武装警官を手玉に取る、ワン・バオチャン扮する狂気の格闘家の圧倒的なスピードとパワー、技のキレはまさにカンフー映画の原点だ。格闘シーンをいかにエキサイティングに表現するかにこだわり抜いたカメラワークと鋭角的なショット、人間の身体能力の限界に挑戦するアクションの波状攻撃に、思わず目が釘付けになった。
他流試合で相手を絶命させ服役中のハーハウは、武術家惨殺をニュースで知り、担当のロク刑事を呼び出す。容疑者の目星をつけたハーハウは警官隊と共に隠れ家で待ち伏せするが、逃がしてしまう。
「カンフーは殺人技」と言う犯人のフォンは強い悲しみと憎しみを抱いている。それは妻を無為に死なせてしまった自分と、何もしてくれなかった世間への怒りに変わる。動機としては歪んでいるのだが、もはや彼には些事はどうでもいい、あらゆる格闘家の中でNO1となるのが妻の無念を晴らすと妄信している。そんなフォンに対してはハーハウも拳で応えるしかない。フォンの行動パターンを知るハーハウは警察を振り切って彼との一騎打ちに臨む。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
そしてついに相対する2人、ここでもトラックや自動車が行き交うハイウェイを決着の場に選ぶ。なぜわざわざこんなところで拳を交えるのか。答えは観客が見たことのないようなアクションを再現するため。躍動感あふれるワクワクを満載した映像を見せるというテーマの前では設定の矛盾など気にしない、いかにも香港映画のスピリッツに満ちた作品だった。
オススメ度 ★★★