こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

黒い司法 0%からの奇跡

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肌の色が黒いというだけで疑いをかけられ、証拠もないのに逮捕され、十分な審理もされずに有罪。米国南部では警察も検事も陪審員も判事も法律や権力の側にいるのはみな白人、黒人たちの嘆きは届かない。物語は、白人少女殺しの濡れ衣を着せられ死刑宣告を受けた黒人を救うために奮闘する黒人弁護士を描く。貧しさに耐えながら真面目に働いている黒人にも偏見は容赦ない。黒人たちは抵抗しても無駄と半ばあきらめている。東部から来たエリート校出身の黒人弁護士はその状況を変えようと奔走する。白人たちは彼に一目置きながらも非協力的な態度は崩さない。それでも丹念に捜査資料を集め再検討し判決理由の矛盾点を洗い出していく。そして、たどりついた真実。弁護士でさえ黒人は全裸のボディチェックされるシーンが衝撃的だ。

アラバマ州で死刑囚の救済活動をするブライアンは死刑囚のジョニーDを救おうと、再審請求のための証言集めを始める。さっそく警察の妨害が入り、せっかく見つけた証人も口をつぐむ。

ジョニーDには完璧なアリバイがある。ところが服役中の白人・マイヤースの証言が決め手になって死刑判決を下されている。ブライアンはファイルを読み込みマイヤースの偽証を確信、彼の説得を始める。その間様々な横やりが入るが、ブライアンの心は決して折れない。無実の男を死刑にして真犯人は野放しにされている、そんな不条理に気づかないふりをし続ける白人保安官と検事の卑小が浮き彫りにされていく。この土地に染み付いた白人優位思想は正義や秩序すら捻じ曲げてしまうのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

再審請求が通り、マイヤースを証言台に立たせるブライアン。偽証したことを認めたマイヤースに対し、「偽証を認めたことが偽証」と屁理屈のような裁定が下される。ここまでくるともはや冗談としか思えない、白人支配層の腐敗。なのに、奴隷時代から暮らしてきた黒人たちは差別に対する不満すら口に出せない空気が色濃く残る。この作品がほんの30年ほど前に起きた事実を題材にしているのが驚きだった。

監督  デスティン・ダニエル・クレットン
出演  マイケル・B・ジョーダン/ジェイミー・フォックス/ブリー・ラーソン/オシェア・ジャクソン・Jr./ロブ・モーガン/ティム・ブレイク・ネルソン
ナンバー  40
オススメ度  ★★★


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