こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アリのままでいたい

otello2015-06-17

アリのままでいたい

監督 鴨下潔
出演 栗林慧
ナンバー 130
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

冬を地中で過ごしたカブトムシ。幼虫だったころの太った白い芋虫体形が雄々しい角を持つ精悍な姿に変身している。最後の脱皮を終え地上に這い出した後はクヌギの木を登り、樹液だまりに集まった昆虫たちを蹴散らして樹液を独占しようとする。その力強さはまさしく森の王者。映画は、体長数ミリから数センチほどの昆虫たちに内視鏡を改造を施した3Dカメラを接近させ、アリの視点を再現する。彼らの体に宿った、生き抜く意思と次世代を残すための本能、それらを満たすためにあらゆる瞬間繰り返される生存競争。“生きる”というのは他の生命を奪うこと、そんな明白な理論をこの作品に改めて認識させられた。

カナブンやチョウが樹液をすする“オアシス”に這い登ってきたカブトムシのオスは、パワーで彼らを押しのける。そこに、同じくらいの体格のクワガタが登場、“オアシス”を巡って宿命の対決が始まる。

太く長い角をクワガタの腹に潜り込ませ投げ飛ばそうとするカブトムシ。巨大なアゴでカブトムシの頭部を挟み込んでクワガタは必死に耐える。お互いの特技を知り尽くしつつなお正攻法にこだわる戦いぶりは、永遠のライバルと呼ぶにふさわしい。カメラはまた、生まれたばかりのカマキリの赤ちゃんが成虫となって産卵するまでの一生にも密着する。アリの巣に引きずり込まれたりクモの糸に絡め取られたりと、獰猛な肉食昆虫であってもほとんどは捕食され、成虫の証である羽根と生殖能力を手に入れられる個体は一握り。そしてメスに頭部を齧り取られながらも絶命寸前に交尾を果たすオスの、生物としてのすさまじい生命力に圧倒された。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

図鑑に乗せられた小さな写真ではなく、スクリーンに大きく投影された昆虫たちの精緻な体の構造と仕組みは、精密機械を見ているような美しさすら感じる。それを子供たちにわかりやすく理解させるためのアニメが挿入されるのだが、この部分をもう少し丁寧に作ってほしかった。

オススメ度 ★★*

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