こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ナイトクローラー

otello2015-08-24

ナイトクローラー NIGHTCRAWLER

監督 ダン・ギルロイ
出演 ジェイク・ギレンホール/レネ・ルッソ/ビル・パクストン/リズ・アーメッド
ナンバー 197
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

あくなき向上心を持ちながら社会からそっぽを向かれ、孤独の中で独自の人生哲学を磨き上げてきた男は、ついに天職と出会う。最初は報酬目当てだった。だが、スリリングな現場にアドレナリンが噴出する高揚感を覚え、自分の成果が世の中を騒がしている優越感に浸るうちに、中毒にも似た快感を得ようと仕事にのめり込んでいく。物語は事件・事故をいち早くリポートしTV局に売り込む映像カメラマンの歪んだ日常を描く。視聴率獲得により刺激的なヴィジュアルを欲するディレクターの要求に応えるために、時に法の一線を越え、事実を捻じ曲げ、人の死すらカネに換えていく主人公を、ほおがこけ目玉をむき出しにしたジェイク・ギレンホールが怪演。良心やモラルの欠如の果てにつかんだ“成功”が放つ強烈な腐臭をスクリーンから漂わせていた。

求職中のルイスは交通事故現場にいたカメラマンからTV局が映像を買ってくれると聞き、ビデオカメラと無線傍受器を手に入れ開業する。カージャックの衝撃場面をニュースディレクターのニーナに持ち込むと思いがけない身入りとなる。

規制線や制止を振り切ってカメラを向けると同業者より過激な画が撮れる。それ以上に、警察に先んずれば圧倒的に出し抜いた報道ができる。助手を雇い高速車に乗り換えたルイスは、人々が寝静まった真夜中のLAでネタを追う。昼間の常識とはまったく別のルールで動く深夜稼業の実体がリアルだ。なぜか時間の経つのが早いと感じるが、それは不要な感覚が闇に遮断され目の前の出来事に集中できるから。そんな夜の空気が濃密に再現されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて強盗殺人事件の犯人と被害者を独占スクープしたルイスは、情報を小出しにして更なる特ダネを狙う。今やニーナも警察も助手も交渉相手、ルイスは需要と供給の関係を冷静に見極め己に高値を付ける戦略を立てる。“戦争の真実を世界に伝える”戦場ジャーナリストも根は同じ、安っぽい正義感など取材現場には通用しないことをこの作品は教えてくれる。

オススメ度 ★★★★

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