こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

イップ・マン 完結

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中国武術界に覇を唱え伝説の映画スターを弟子に持つ至高の武術家も、妻に先立たれ、病魔に侵され、残り時間は少ない。だが、彼にはまだ十代の息子を育て上げる義務がある。物語は、イップ・マンの晩年、米国での “最期の戦い” を描く。サンフランシスコの白人にとって、華人は劣った移民。意見はおろか目立ってもいけない。華人内部でのもめごとと、華人対白人の抗争に巻き込まれた主人公は味方のいないアウェイ戦に挑む。白人社会を刺激しないように縮こまっている旧態然とした華人社会。その殻を破って中国武術を広めようとする男は華人会幹部から白眼視されている。さらに、中国武術と軍用空手の主導権争い。“ダイナー裏で白人空手家をブチのめすブルース・リー” の姿が彼の主演作とダブり懐かしかった。

退学になった息子の転校先を探してサンフランシスコに渡ったイップ・マンは、ブルース・リーの師匠というだけで華人社会から受け入れてもらえない。そんな時、華人会会長の娘を暴漢から救う。

太極拳の使い手の華人会会長と一戦を交える一方で、中国武術を米国海兵隊に取り入れようとする華人系軍人と白人至上主義の軍人の対立が華人社会に持ち込まれたり、逆恨みした移民局の白人が華人会会長を拉致したりと、イップ・マンが行くところ次々とトラブルが出来する。このあたりいかにも香港映画らしい場当たり的な展開なのだが、“静のカンフー” と “動の白人空手” の対比を基本とするさまざまな格闘シーンが忘れさせてくれる。なによりイップ・マンに扮したドニー・イェンの、力強さの中にしなやかな様式美を湛えた流麗かつ端正なカンフー型に見とれてしまう。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

白人と華人社会の全面戦争を傍観できないイップ・マンは同胞に加勢する。イップ・マンと互角の実力を持つ華人会会長を病院送りにした海兵隊員との一騎打ちは、一進一退の攻防。パワーに勝る軍人に対し、鉄壁の防御と関節技で対抗するイップ・マン。相手を倒しても表情を変えないイップ・マンの自制が美しかった。

監督  ウィルソン・イップ
出演  ドニー・イェン/バネス・ウー/スコット・アドキンス/チャン・クォックワン
ナンバー  44
オススメ度  ★★★


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