こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

シークレット・スーパースター

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妻は奴隷、娘は所有物。男は家族の女たちに高圧的な態度で接し、一言の反論も許さない。物語はそんな家庭で暮らす少女がスターになる夢を叶えるまでを描く。自由にならない人生を嘆いた歌はネットで注目を浴び、母を想う歌は一気にバズる。だが、父にばれるのを恐れるあまり動画では顔を隠している。さらに学業成績の低下からギターやパソコンを奪われてしまう。電気もなく電波も届かないような非文明的なへき地ならばともかく、一応TVもPCもスマホも空港ある近代的な都市で、いまだこんな前近代的な男が存在するのが信じられない。気に入らないことがあると怒鳴り散らし暴力に訴えるのも平気で無学な妻を罵る男の姿は、インド社会の旧弊として戯画化されているのだろうか。日本なら「こんな奴はおらへんやろ」といい切れるのだが……。

ギターを爪弾きながら歌うのが好きなインシアはオーディション番組出場を計画するが、父に言い出せない。そこで、母にもらったノートPCで動画を公開すると世界中からコメントが寄せられる。

インシアに興味を持った落ち目の音楽家シャクティが新曲のボーカルにインシアを抜擢、彼女をムンバイのスタジオに招く。シャクティはインシアの起用で話題を作り復活を狙っている。インシアはこのチャンスに運命を変えたいと思っている。やがて彼女の熱い思いはシャクティに通じ、母親がきちんと離婚できるように弁護士まで紹介してもらう。このあたり、障害が多く苦難は続いても基本的に「求めよ、さらば与えられん」の精神が作品の根底に流れ、あきらめずに前向きな生き方を貫けばおのずと道は開けると訴える。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

もはや先進国では見られない古臭い設定だが、それでも一切の衒いなくインシアのサクセスストーリーに寄り添う一貫性は、映画を純粋な娯楽と捉えるボリウッドならではの展開。インシアが己の成功を喜ぶよりも産み育ててくれた母への感謝を語るシーンは、フェミニズムへの理解が遅れている実態を象徴していた。そのあたりもう少し知りたい。

監督  アドベイト・チャンダン
出演  ザイラー・ワシーム/メヘル・ビジュ母/ラージ・アルジュン/アーミル・カーン
ナンバー  191
オススメ度  ★★*


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