右に進んだ子は無事帰宅した。左に行った子は行方不明になり、ランドセルが見つかった。山奥の過疎の村、情報は住民の間を駆け回りよそ者は常に色眼鏡で見られる。物語は、未解決女児行方不明事件の12年後、別の事件をきっかけに新たな悲劇が繰り返される過程を描く。小さなアパートで必死に生きる出稼ぎ外国人母子、狭い世界に息苦しくなって東京に出た娘、都会から戻って養蜂を始めた男やもめetc. 村以外の空気を吸ったことのある者は排他的な視線をいつも感じている。平時は良好な対応をしてくれるが、一度しくじったら絶対に許してもらえない。急激な変化を嫌う古い価値観、建前や因習、地縁血縁でがんじがらめにされた閉鎖的体質気質がリアルに再現されていた。そして、疎外された人々の孤独が切なくも哀しい。
行方不明少女の親友だった紡は農道で転倒、バンで通りがかった豪士に助けられる。急接近するふたりだったが、再び行方不明事件が発生、村人は豪士が犯人と決めつけて追い込んでいく。
一方、山間の集落では田中がひとりで養蜂場を営んでいたが、有力者の怒りを買って村八分にされている。あらぬ噂を立てられたりゴミ出しを禁止されたり役所に強制代執行させたりとやり方は陰湿、田中は徐々に追い詰められていく。ほかにもせっかく東京に出た紡が友達もできず同郷の青年とつるむあたり、どこに行っても田舎の人間関係に振り回されている。逃げ出したい、でも行き場がない。破滅するしかない男たちの運命がヒリヒリするような感覚の映像に活写されていた。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
ただ、ミステリーの体裁をとるなら真犯人は明示すべき。豪士は少女の名をつぶやいて自焼するが、彼に少女の死体を隠す余裕はなく、単に彼女への思いを口にしたかっただけかもしれない。むしろ田中が少女の死体を軽トラで自分の土地に運んで埋めたとも解釈できる。結局、豪士・紡・田中3人のエピソードが散文的に羅列されるばかりでクライマックスへの伏線にはなっていないのは残念。やはり衝撃の真実を用意してほしかった。
監督 瀬々敬久
出演 綾野剛/杉咲花/佐藤浩市/村上虹郎/片岡礼子/黒沢あすか/石橋静河/根岸季衣/柄本明
ナンバー 250
オススメ度 ★★*
↓公式サイト↓
https://rakuen-movie.jp/