こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

牛首村

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ふとしたきっかけで知ってしまった、己の分身ともいえる存在。だがそれは、忌むべきものとして忘れ去られたはずだった。物語は、富山の心霊スポットでライブ配信中に行方不明になった少女を探す東京の女子高生が体験する恐怖を描く。動画に移りこんでいたのは自分とそっくりの女の子だった。彼女の記憶はないのに、すぐ近くに気配を感じるようになった。それらは、この世に生を受けながらも大人になることを許されなかった多くの魂と結びつく。そして、生きている者たちの現実に忍び寄り、ほの暗い地の底に引きずり込んでいく。耳元をなでるような空気の流れ。髪の間から光る邪悪なまなざし。憎しみと怒りと恨みと哀しみを牛首マスクで封印された人々の無念が発する負のエネルギーは、息詰まる緊迫感があった。

廃墟になったホテルを訪れた奏音と漣は異様なほどの邪気を察知しその場を去る。海岸で蜃気楼を眺めていると将太と出会い、家に案内されると、そこには奏音の父と実の母が待っていた。

奏音はそこで双子の姉妹・詩音がしばらく前に失踪したと聞かされる。将太も詩音を探している。もはや個人的な問題ではない、奏音は村に隠された真実を知ることが詩音を救うことだと確信し、調査を開始する。その過程で、かつてこの村では双子は忌児と呼ばれていた事実を祖父母から教えられる。その後、幻覚と現実の境界が曖昧になった世界に迷い込んだ奏音と将太は、亡霊にとりつかれる。このあたりのホラー描写は理屈よりも感覚が重視され、死の穢れと人の怨念が作り出す狂気を再現していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて廃ホテルに案内してくれた男や連までもが非業の死を遂げ、奏音はこの事件は一族が抱える秘密でもあると気付き、過去に同じ運命をたどった祖母の話に耳を傾ける。因習にとらわれた山奥の小さな村での、子供の人権を無視した蛮行。その悲劇に奏音はいよいよ表情を硬くする。彼女を演じたkoki,の固さにいら立ちを覚えたが、後半になると、なぜか彼女の不器用さは禍々しい映像にマッチしていた。

監督     清水崇
出演     Koki,/萩原利久/高橋文哉/芋生悠/松尾諭/田中直樹/麿赤兒/竜のり子
ナンバー     36
オススメ度     ★★★


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