夜を闇から解放する。だが、電球を通じて世界を明るく照らした男は、電気の供給方法でライバルとのし烈な争いに巻き込まれる。物語は、歴史的な発明家が送電方式を巡って巨大事業家と覇権を競う姿を描く。一度研究に取り組むと家族のことなどすっかり忘れてしまう仕事人間。ひらめいたアイデアを実用化するまでは絶対にあきらめない努力家。投資家を説得し部下を鼓舞する饒舌。そしてなにより、市場で勝つためには手段を選ばないマキャベリスト。夢を追い実現させるためには情熱と勤勉は必要だが、同時に資本主義・自由社会であるがゆえの利害衝突は避けて通れない。映画は、感動的で口当たりのよい伝記ではなく彼のダークサイドに迫り、後世に名を残した偉人も決して聖人君子ではないと教えてくれる。
電球に通す電流において、直流にこだわるエジソンと、より大量かつ安価な交流を推進するウェスティンハウス。2人は一歩も譲らず全米を舞台にシェアの奪い合いを繰り広げるが、エジソンは資金難に直面する。
自分の発明はすべて自分でコントロールしたいエジソンと、特許の法的な問題をクリアしたうえで競争に参加するウェスティンハウス。交流の優位性が徐々に確立すると、エジソンは交流のネガティブキャンペーンを打つ。電圧の制御が難しく危険と非難するだけでなく、処刑用具への転用でイメージダウンを図ろうとする。合理的な方が受け入れられるはずなのに、人心をミスリードしてまでウェスティンハウスを蹴落とそうとするエジソン。隣家とのフェンスの話が、他人の成果にただ乗りしようとする者への彼の憎しみの正当性を象徴していた。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
光と闇のコントラストのみならず、サスペンスフルな作品に多用されるさまざまな技巧に満ちたショットの数々は、監督の映像表現へのこだわりなのだろう。それは、いかに尊大で自己中心的な人物であっても、映画の原型となるキネトスコープを開発したエジソンに対するリスペクトに他ならない。やはり人は何を成しえたかで評価されるべきなのだ。
監督 アルフォンソ・ゴメス=レホン
出演 ベネディクト・カンバーバッチ/マイケル・シャノン/トム・ホランド/ニコラス・ホルト
ナンバー 92
オススメ度 ★★★
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https://edisons-game.jp/