捕虜になった同僚を救出するために敵のアジトを急襲する。古いゴミ収集車で逃走するも、追手は強力な火器を持ちたちまち迫ってくる。スラムっぽい街から道路が整備された中心街まで繰り広げられるカーチェイスはロケならではの迫力に満ちていた。物語は、次世代エネルギーのカギを握る技術の争奪戦を描く。野望を秘めた中国人起業家、食い物にされていることに気づいた日本企業重役、日本を追い出された発明家。エージェントたちはそれぞれの立場で彼らの情報を奪い合う。破壊や殺傷も必要とあらば許可されているエージェントたちの、命がけのアクションには手に汗を握りっぱなしだ。展開の圧倒的な速さに、ストーリーを追うことを忘れ思考停止に追い込まれてしまった。仲のいい友達を親友と呼べなかった少年時代の葛藤が切ない。
日本のスパイ組織・AN通信の工作員・高野と田岡はブルガリア・ソフィアで山下の奪還に失敗した後、太陽光エネルギーの独占を狙う中国企業の陰謀を阻止するためにウィーンに向かう。
エネルギープラントを巡って暗躍する韓国人エージェントとの関係を整理できないまま、山下の情報をもとに中国企業が建設中の大規模エネルギープラントに潜入を図る鷹野と田岡。遮蔽物がほとんどないタクラマカン砂漠にある施設にヘリコプターで接近するのは目立ちすぎだと思いきや、案の定すぐにロケット弾で撃墜され鷹野は捕らえられる。このあたりもう少し緻密な構成にしていれば、体内爆弾のタイムリミットとの戦いに頼らなくてもスリリングにできたのではないだろうか。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
並行して語られる鷹野の少年時代のエピソードは、親を失って組織しか頼れない子供たちの、殺し屋になる運命を受け入れざるを得ない哀しみに溢れている。特に初恋の少女との交流は涙を誘う。同じ境遇の同級生と更衣室を覗き「ケツを見た」かどうかでじゃれ合うシーンは、鷹野が生き残るうえでの最高の伏線になっていた。ただ、心臓に爆弾を埋め込めば裏切りは防げても組織への忠誠心は生まれないと思うが。。。
監督 羽住英一郎
出演 藤原竜也/竹内涼真/ハン・ヒョジュ/ピョン・ヨハン/市原隼人/南沙良/日向亘/加藤清史郎/勝野洋/鶴見辰吾/佐藤浩市
ナンバー 39
オススメ度 ★★★