こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

インビジブル・シングス 未知なる能力

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変身して悪い奴らをやっつけるヒロインに憧れていた。強くなったわけではないけれど特殊な体質を手に入れた。だが、悪党を倒す前に自分自身が狙われてしまう。物語は、偶然透明人間になる能力を得た少女が、家族と世界を救う姿を描く。コミック好きで社交性は乏しい。やっとできた友達は転校生と機械オタク。そして少女は彼らと力を合わせて悪意を持った大人たちに立ち向かう。ママはいったい何者なのだろう。パパも知らなかった一面を垣間見せる。学校でも家庭でもいまいちイケていない彼女だったが、冒険が始まるとがぜん勇気とやる気がわいてきて、危険を顧みずに真相を究明しようとする。ただ、小学生向けに作られたと思われるこの作品、ほとんどの設定が安易な上、登場人物の感情をいちいち音楽で説明しようとする。もっと、主人公の孤独や苦悩に寄り添えば共感できたのだが。

ママの実験室に忍び込んだスーは開発中の化学物質を浴び、体温が上昇すると体が透明化するようになる。画期的な新発明だったが、ママはスーの目の前で男たちに誘拐される。

自らの身にも危機が迫っていると感じたスーは、学校の友人、カヤとトビーに協力を求め、ママを探す。カヤは天才的ハッカーであらゆる電子機器を操り、トビーは自転車でスーを助ける。そのあたりも対象が子供ゆえかアクションに切れ味はない。ユーモアにも乏しく、いかにも大人が考えた教育的映画の匂いが漂ってくる。また、トビーやスーの父、ママの上司といった男性キャラはあくまでも間抜けな設定の添え物で、善玉も悪玉も活躍するのはみな女性キャラというあたり、フェミニズムに走りすぎていてあざとい。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

まあ、小学生ならばそんなツッコミは入れずに素直にスーたちの冒険に心を躍らせるだろう。むしろ大人の裏をかく作戦やきりきり舞いさせる行動力が子供たちの想像力を掻き立てるのかもしれない。それでも、ディズニー作品のように少年少女の内面にフォーカスし、彼らの喜怒哀楽をリアルに再現していたのならば大人も楽しめたはずだ。

監督  マルクス・ディートリッヒ
出演  ルビー・M・リヒテンベルク/アンナ・シリン・ハベダンク/ルイ・エッヒハート/ビクトリア・マイヤー/リュック・シルツ
ナンバー  108
オススメ度  ★★


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