こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

SKIN/スキン

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憎んでいたわけじゃない。癒されたかっただけ。今の己は間違っている。そう胸の片隅で感じながらも虚勢を張っている。そんなとき出会った3人の娘を養うシングルマザー。物語は、レイシストグループに育てられた青年が思いやりを学ぶことで人生を変えていく過程を描く。“父” の命令は絶対だった。“母” はいつも気にかけてくれた。それが一種の洗脳だったと知ったとき、彼はシングルマザー一家と生きる道を選ぶ。だがそれはグループへの裏切り、世間もそう簡単には彼を受け入れてはくれない。顔から体にかけて彫られた数十のタトゥーは、社会への不満と、自分たちの権利を脅かすマイノリティへの怒りを象徴する。目に見える印はレイシストなりの覚悟ではあるが、それゆえの生きづらさも抱えている。その矛盾に苦悩する主人公の心がリアルに再現されていた。

ヘイトデモの先頭に立ち反対派との衝突にもひるまないバブスは、集会で知り合ったジュリーと仲良くなる。ふたりは付き合いだし、ジュリーの娘3人とも良好な関係を築くと、バブスはグループと距離を置く。

筋肉質の肉体とスキンヘッド、タトゥーだらけの顔と上半身を見せびらかすように暮らしているバブス。短気で暴力的な傾向はあるものの、ジュリーの娘・イギーとすぐに打ち解けるなど、根はやさしい男だ。まともな教育を受けず狭い世界で過ごしてきたがゆえに差別主義が間違っていると気づかない。一方で、“父” が腹をすかせた少年をリクルートするシーンなど、白人貧困層が構成員の供給源になっている。ジュリーとの結婚を本気で考え始めたバブスは仕事を探すが職安で断られるなど、反ヘイト団体からの締め付けもある。このあたり、こけおどしのタトゥーなど負け犬の刻印にすぎないと訴える。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ジュリーと別れるか更生するかの二択を迫られたバブス。反ヘイト団体リーダーに助けを乞うが、レイシストグループの嫌がらせが執拗に繰り返される。それでも信じてくれる人がいる。愛と信頼が人を変えるとこの作品は教えてくれる。

監督  ガイ・ナティー
出演  ジェイミー・ベル/ダニエル・マクドナルド/ビル・キャンプ/ゾーイ・コレッティ/カイリー・ロジャーズ/コルビ・ガネット/マイク・コルター/ヴェラ・ファーミガ
ナンバー  109
オススメ度  ★★★*


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